研究発表というとどんなものを思いつきますか?

ほとんどの人は学会発表といった学外へ向けての発表だと思います。

確かに、学会発表は専門が近いガチの研究者や先生からフィードバックをもらえるし、研究を始めたての学生はまず自分が所属している研究分野のプロフェッショナル達に認めてもらうことを目指すべきです。

ただ僕もそうですが、みんなが研究者として一人前になることを目指しているわけじゃないです。で、とりあえず一番重要なのは学士や修士の学位が取れることで、あわよくば、学生賞などをとって好成績で卒業できることの方が学外で評価されることよりも大事だと思います。(まあ今更成績なんて・・・って感じですけど)

何とか卒研を乗り切るとか、好成績で卒業したいとか、目的は人によって異なると思いますが、特に目的がない場合でも、学外と学内で発表を変える必要があるんです。

ということで、今回は学内発表で心がけることを考えたいと思います。

 

 

学内と学外で発表対象が違う

 

学術的な発表に関わらず、何かを誰かに発表(伝える)際に最初にやらなければならないことは、聞き手がどんな人か調査することです。

例えば、企業の営業の人だったら、営業先の業界や業績を調べ上げて、相手が一番興味があることである、どんな利益があるのかを軸に話すと思います。

小学校の先生だったら、小学生でもわかる知識レベルで、なるべく生徒が興味を失わないように話す必要がありますし、同じ小学生でも有名私立の進学校と田舎の小学校ではだいぶ先生の話し方が変わるのではないでしょうか。

じゃあ、大学生(大学院生)はどうかというと、学内と学外で発表先がだいぶ変わります。

学外の学会の場合は、聴講者はその分野を極めた人たちです。たとえ学生であっても基礎的な知識は研究室でつけてきてますし、毎日嫌というほどその分野に関する話を聞いているので、基本的な話や概念を話しても確実に飽きられます。

だから、みんなが知っていることは専門用語を使って、その会場にいる人たちが知っていることのその先の話を詳しく話すことになります。

平たく言ってしまえば、多少ぶっ飛ばしても理解してもらえるということです(異分野合同の場合は例外)。

それなら、学内はどうかというと、同じ学科にいるとは言え、学会や分野に所属している人は数人であとは他分野の人なのではないでしょうか。まぁここら辺は学科によって事情が違いますが、僕が修士に所属していた研究室は研究室外で同じ学会に所属していた人は一人もいませんでした。

となると、その分野特有の専門用語や暗黙の了解、研究常識は一切通用しません。

当たり前のことですが、学外での発表になれるとついこのことを忘れがちなので、学内での発表の際には必ずこのことを思い出してください。

 

 

伝えることが最優先 知識レベルは一番低い人に合わせるつもりで・・・

 

ここで、意識してほしいのが、「わかる人にはわかる発表」じゃなくて「その会場の全員がわかる発表」を目指すことです。

すくなくとも教員の先生方には全員伝わる発表するべきです。

なぜ、「わかる人にはわかる発表」じゃダメかというと、学内発表で学生の成績を決める際は、聴講していた先生の採点の平均点が使われるからです。

そして、どんなに高度な成果が出ていたとしても、それがどういうことなのかそしてどのくらい成果として出すのが難しいのかを分かってもらわないと、なかなか先生たちは点数を出せません。

雰囲気的に凄いのかもしれないと思っても、自分が理解できない事項に関して平均点以上の点数を出すのは不可能です。

さらに、この学生は合格させられないとか、再発表だとそういうことを決める際はだいたいの場合、厳しめな先生がちょっとあの子はダメなじゃないのかと指摘します。

つまり、一部分の人にめちゃくちゃ評価される発表よりも、全員にある程度評価される発表を目指す必要があるのです。

そのためには、ちゃんと自分はこの研究で何をして、どんな成果だし、それにどんな意味があるのか、一つづつ理解してもらうことが先決になります。

そのためにも、知識レベルは一番低い人に合わせることが重要になるのです。

これは僕が勝手に思っていることですが、大学教授でも自分の専門外のことに関しては意外と知識がない人が多いです。そこら辺のおっさんと同じ共ではいきませんが、普通の理系のおじさんと同じ理解力と知識しかないと思っておいた方がいいです。

お父さんが理系の企業で働いているなら、自分の研究をお父さんに話すぐらいのつもりで話すとちょうどいいかもしれません。

さらに、僕の偏見の中では理系の人間でも50超えると急速に理解力が低下します(低下しない人もいます。よくない差別ですが、そう思っておくに越したことはない)

んじゃ、学生はどうなんの?ってなりますが、学生はわからないやつが悪いぐらいのつもりでいいかもしれません。

それに、学部4年から修士ぐらい人間の方が自分の知識がないゆえに新しい概念に対する適応力は高いので意外とついてきます(これも偏見)。

ただ、学生野評価も成績に考慮される場合は話が違ってきますね。

 

 

みんながわからない専門用語は説明するか、つかわない、尺の関係で使う場合は予備スライドを作っておく

 

当たり前ですが、わからないに専門用語が一番人の理解を妨げます。

専門用語は使わないでおくか、使う前に説明しておくのが定石です。

あとに詳しく書いておきますが、もし使うとしても日本語の名称や一般的な英単語を用いたものを使っておくとつぶしがききます。

たとえば、いい例が思いつかないので自分がやっていた脳科学の話をするとSTSPじゃ一体何のことかさっぱりですが、日本語で短期シナプス可塑性というと神経のシナプスの性質のことだとなんとなくわかります。STSPはShort-term synaptic plasticityの略ですがPlasiticityという言葉は生物学では使うのでこれでも生物の人だったら理解できるわけです。

でも、どうしても時間的に略称を使わないといけないし、説明している時間がない場合は、質問されたときの予備スライドを救っておきましょう。

意外と盲点なのが、実験機材や解析手法、素材の選定といったテクニカル質問です。

その分野の人にとっては当たり前すぎるかもしれませんが、分野外の人はそこでわからなくなるという事故が多々あります。

で、あとでテクニカルなことに争点が移ってしまうと、研究の本質に関することがないも伝わらなくなるので、あらかじめ説明しおくか、質問が来たときに速攻で返すためのスライドを作っておくのがおすすめです。

この質問解答スライドですが、学内の発表で準備に余裕がある場合は必ず作っておきましょう。

専門内の人に口頭で抽象的な話をするのは簡単ですが、専門外の人に口頭でというとなかなか骨が折れます。

 

 

図表は大きく、英語はすべて日本語に訳しておく

 

ここら辺からは、人によってかなり流儀がわかれるので、研究室の先生の方針に従ってください。あくまで、これは僕の流派の話です(しかも、学部時代の研究室の話で、修士の先生の考え方には反します)。

よく、論文や国際会議で使った英語の資料をそのまんま貼り付けている人がいますが、図表内の英語はすべて日本語で大きく書き直してください。

日本の大学のグローバル化は全然進んでないので、学内で英語の資料を掲げても8割の人が理解できません。あと、論文から持ってきた資料は細かい情報が小さすぎて発表とき見にくいです。

これには異論があると思います。理想は学内発表でも日本語がわからない先生や留学生のために英語の資料を用意すべきです。

ただ、外国人の先生のもとで研究したことがあるのでわかるのですが、この日本のアカデミック世界のルールは日本の大学で生きるなら日本語を使えです(ちなみにこれがいつまでたっても日本の大学生が英語ができない理由です)。

もし、学科に日本語出来ない人がいるのなら別途英語のキャプションをつければいいと思います。

あと、自分が作った図表ならOkですが、他人の作ったものを勝手に改変するのは2次編集になっちゃうので嫌がる人がいるかもしれません。正直そこは研究室の先生の考え方なので先生に聞けばいいと思います(そこまで気にする人は少数派)。

ちなみに学外での発表では、みんな同じような図表を毎日見ているので小さかろうが、英語だろうが雰囲気で図表を読み取ることができるので特に気にしなくてもOKです。

 

 

背景はめっちゃ需要 自分の研究のもとになった知見を作った先人について書く

 

ここはさらに、微妙なところでむしろやっている人の方が少ないと思いますが、僕が追い出された学部時代の研究室の人はみんなここに心血を注いでいました。

若干話と飛ぶんですけど、Google scholarの検索画面に「巨人の肩の上に立つ」って書いてあります。

巨人の上に立つ 学生の心構え

勝手にそう解釈ているのですが、研究者は誰かの研究成果を使わせてもらって新しい知見を得るという意味(googleの戒め)です。たぶん、

これは大学でも、企業でも、研究とか開発(そのほかのことも全部)の新しいことをするときの基本で、たまに、自分の研究室での成果を自分の能力の証明みたいな言い方をしている人を見ると僕は虫唾が走ります。

って思うのは自分が巨人の方に乗らずに背のびしたら、真っ逆さまに転落したような学生生活を送ってきたからで、逆に常に周りからのサポートがあった人はこのことのありがたさを理解していないのだと思います。

じゃぁ先生たちはどうかというと、大学で荒波に揉まれた人は先人の教えや知恵に対するリスペクトなしでは自分の研究は成り立たないのを理解しているので、僕と同じように自分の研究成果を0から自分がやったみたいないことをいう学生はいじめたくなるわけです(ちょっとしかいないとおもいます)。

じゃぁどうするかというと、背景で先行研究によって誰がどこまで解き明かしているのかをしっかり伝えるのです。前の研究室では個人名を出せと言われていましたが、そこは自由だと思います。

先行研究はその分野では一般的な研究もありますし、研究室内の先輩の成果もありますよね。

そうすることによって、自分がどっからどこまでをやったのかを明確に伝えることもできます。

ちなみに、専門の人が集まった学会では研究背景はみんな周知の事実なので特に話さなくても伝わります。先行研究として参考にした研究について話したら会場に本人がいるって可能性もあります笑

 

 

最後に・・・みんなに楽しんでもらうこと

 

さらに、個人的なはなし。

あくまで修論発表は単位をとるための発表で、発表者も聴衆もそれを割り切ってきています。

でも、みんな忙しくてやることがあるのに集まっているわけです(先生たちは週末締め切りの論文の原稿を書き上げたいと思っているかもしれないし、学生早く研究室で打ち上げしたいと思っているかもしれません。いや、確実に思ってます)。なんで、せっかくだから聞いてよかった(話してよかった)と思えるような内容にしたいですよね。前述したように異分野の人間が集まていますし、修士や学部の分際でなかなか人様の役に立つことは言えないかもしれませんが、面白いとか、自分も頑張ろうとか、新しい興味が増えたとかそう思ってもらえることはできます。

正直、僕の研究成果だと賞とかは無縁だし、逆に棒読みでも寝坊せずに発表すれば単位は来ます。それに、成績も合否しか出ないし、就職が決まった今成績とかほんとどうでもいいです。だから、一人でも多くの人に聞いてよかった思ってもらうことをモチベーションにしたいと思います。

そんなことろでしょうか。また、なんか思いついたら書き足します。

要は、学会発表と卒研(修論)発表はおんなじじゃだめだよっていう話で、自分への戒めです。(この記事を書き始めたのはちょうど自分のスライドを作り始める前)

 

それでは。