大学の近くに”食神”という中国料理屋がありました。
調布では結構有名なお店で、近くにスタジオとか現像所があるせいか芸能人とか業界の人がよく目撃されているようでした。
僕も女優の高畑充希さんをこのお店で目撃したことがあります(スタッフ10人くらいで来ていて、本人が注文したのは豆腐と水だけでしたが)。
中華料理というより中国料理という感じで辛い料理は本当に辛かったんですけど、中国出身の店主の方にとってはそれほど辛くしているつもりはなかったのかもしれません。あと、甘口を頼むと砂糖がめいっぱい入れられて料理が運ばれてきます。
店員さんは不愛想で、お店もなんか汚いけどそれでも料理の味はどれもおいしくて1か月に一回くらいは行きたくなるようなお店でした。調布に行ったら必ず食べに行こうと思っています。
さて、調布の名店”食神”には料理の味以外にも僕がすごいと感じているところがありました。
それは、ITを駆使するのが上手ということです。
ある日突然LINEで注文できるようになった
たしか、2016年ごろだったと思います。ある日食神に入店すると、各席に宅番号のシールとQRコードが張られていました。
それでその時、一緒に来た友人に教えられたのですがQRコードから店のLINEアカウントを友達登録して、宅番号と注文をメッセージで送ると店員を呼ばずに料理を注文できるようになっていました。
これが実に簡単な仕組みで、だれもが持っているLINEアカウントを使うだけだったのですが、結構機能していて注文を聞きに行くというホールのスタッフの半分の仕事がメッセージの送信だけで済んでしまいました。
メッセージの送信という手間はあるものの、客にとっても店員を待って口頭で注文を伝えなくて済むというのは便利なんですよね。全員が選んだ料理名をLINE上でまとめて送ってしまえばあとは会話に集中できます。
日本のそこら辺のお店がこういうことをしようとしたら、そこそこのお金をかけて、端末やソフトウェアを導入するのだと思いますが、食神の店主はラインのアカウント一つで見事に注文のデジタライゼーションに成功してしまいました。
友達登録したLINEアカウントから普通だったらキャンペーンやクーポンが送られてきますが、この中国料理屋はそういうはことしません。
代わりに、急遽人手が足りなくなった時にLINEのタイムラインで臨時バイトを募集するんです。
こういう使い方も自分的には驚きで、客の多くが登録しているLINEアカウントを使って客から働いてくれる人を募集していました。しかも、いつもすぐに働いてくれる人が見つかるんです。それで、大体みんな常連なので説明とかなしにすぐに店員として働けるわけです。
もちろんLINE Payで支払いできますし、PayPayも使えます。当然かもしれませんがWeChat PayやAlipayの導入もめちゃめちゃ早かったです。
Twitterのフォロワーも3800人
ここんとこは同じようなことしてるお店が結構あるかもしれませんが、Twitterもちゃんと活用していてとりあえず相互フォローなしでお店のアカウントのフォロワーが3800人もいました。
僕が通ってた大学の学祭が近づくと、毎年店で一番辛いマーボ春雨を食べたら食神のTwitterアカウントから宣伝ができるという企画があって、模擬店やライブをやる団体が喧伝のために無駄に辛いマーボー春雨を毎日のように食べていました。
普段3800人のフォロワーが店主のボヤキを見ているタイムラインで宣伝できるわけで、しかもフォロワーは大学関係者か調布市民であることを考えるとかなり宣伝効果はあったと思います。
それで、その投稿を宣伝を行った団体の関係者がこぞってリツイートするので、例えば調布を離れたOBとかが学祭に訪れたついでに食神にたちよるわけです。
店員の皆さんは中国出身の人が多くて、もちろん日本語は喋れますが、母国語ではない言葉でこれだけ多くの人と引き付けられるのはすごいことだなって思っています。
受け手もリベラルだったからできたことかもしれない
前から思ってたんですけど、こういう日本人からすると型破りなITの使い方(大したことはしてない)は店主の方が日本の方じゃないからできるのだと思います。中国の方が先に電子決済が流行ったし、音楽のストリーミングのようなサービスも広まったのが早かったのはこういうことなのかと思いました。でもそれだけじゃないのかもしれません。
この話を地元(栃木)の友人などに話すと、「接客しないのはちょっと」とか「ツイッターで店主のボヤキを聞きたくない」とか言われてしまいました。
それで思ったのですが、多分これを地元の駅前とかでやってもうまくいかなかったかもしれません。
食神があるのは大学のすぐそばで、常に大学生が往来するところです。うちの大学は情報系の単科大で新しいもの好きの人が多いですし、いろんな意味でみんなオタクなので、逆に世の中の一般常識とかが通用しないことが多い。
だからこそ、甲州街道の道沿いにあるこのお店がITを駆使していろんなことをやれたのだと思います。
どういことかというと、結局一般的な日本人は最新技術や生活様式に対してかなり保守的で、新しいサービスが始まってもその価値に気づくことができず、受け入れることもできない。
だから、日本で画期的なサービスや製品ができても消費者がそこにお金を落として貢献しないから育たないわけです。
日本の企業だって、プログラムやネットワークを駆使してサービスを作れますし、これまでいろんなアイディアが形にされてきました。でも、多くが育たないか、他国に大きく後れを取ってしまいます。
iPhoneの日本での受け入れられ方がいい例
この仮説を検証するいい例が日本におけるiPhoneの普及の仕方です。
ぼくが初めてiPhoneを手にしたのは、今から11年前の2009年のことでした。
僕はまだ中学生で、高校入試のお祝いに親におねだりして買ってもらったのをよく覚えてます。それもで携帯を持ったことはなかったのにこれからはスマホの時代だと泣きながら訴えました。
それで、高校に入学したら学校でiPhoneを持っているのは僕一人で入学そうそう「フォーン」というあだ名をつけられました。当時はスマホという概念が受け入れられていなくて、iPhoneを自慢する僕は差別の対象になってしまったわけです(卒業間際、あだ名をつけてきた子に自分が間違っていたと謝られました)。
それからしばらくするとAndroid OSを搭載した日本の家電メーカーが作るスマホが日本で普及しだします。僕が高校生だったころはiOSとAndroidが半々って感じでしたが、卒業するころ(2013年)までにはほぼ全員がスマホを持っていました。
正直このころのiOSとAndroidの完成度は確実に先行していたiOSのほうが高かったと思います。Androidのタブレットも持っていましたが持ち歩くとしたらiPhone一択でした。
それが、徐々にiPhoneユーザーが増え2019年には80%がiPhoneユーザーになります。
じゃぁ逆に世界はどうかというと年々Androidユーザーが増え今や75%のスマホにAndroid OSが入っていて、iOSのシェアはたった22%なわけです。
ちなみに僕は去年10年間使い続けたiPhoneを捨てAndoroidのHuawei p30 liteを使っています。あくまで僕の意見ですが普通に使っている上ではiOSのアドバンテージはなくて、コスパを考えるとAndoroidを使ったほうがいいと思っています。
ここからわかることは、日本人の消費者は新しい価値を受け入れるのに5年から10年世界から遅れてしまうということと、一度受け入れてしまうとそれが価値を失っても捨てることができないということです。
さて、そんな日本でサービスを展開している日本のIT企業はたとえ革新的なものを生み出したとしても、消費者に受け入れてくれないので日本でシェアを獲得したり海外進出する前につぶれてしまいます。そうこうしているうちに同じようなサービスが海外で発展して日本にやってくるので、日本のIT企業は地元のビジネスではそこそこでも世界では苦戦を強いられるわけです。
ある通信会社が、iPhoneを売り出すのを遅れてしまい顧客を逃したというのは有名な話ですが、どうしてそうなってしまったかというと、そのキャリアを利用しているユーザーが日本人の中でもかなり保守的な人たちなのでユーザーの意見を取り入れるとどうしてもiPhoneに手を出すことができなかったのではないかと思っています。
つまり、日本がなぜかITだけダメというのは作り手が悪いのではなくユーザーのマインドがいけないのです。
最初から日本で商売しないというのは一つの選択肢では?
さて、この奥ゆかしい日本人の特性は別に外国の方より劣っているわけじゃなくて、単純にスピード感が重要なITと相性が悪いのだと思います。逆にハードウェアに対しては確実に進めるという姿勢が技術力の発展に貢献したのではないでしょうか。
でも、ITに関しては海外に行けない日本企業は他国からの進出におびえながら限られたパイをみんなで奪い合うしかないのです。
それだったら、最初から海外に向けてサービスを展開してみるのはどうでしょうか?
確かに言葉の壁というキツイ障壁はありますが、ITの場合地理的なハードルを他よりも確実に低いので、ネットを駆使してマーケティングをし、海外でサービスを構築すれば十分海外に向けて発信することは可能だと思います(素人感覚です)。
別に海外のエンジニアを雇う必要はなくて、雇うとしたら美しい英語で自社の魅力を伝えられる人に仲間になってもらいます。
逆に海外でシェアが取れたら、10年待って同じことを日本ですればいい。
はぁ、英語もっと勉強しなきゃ・・・。
それでは。