今にはじまったことではないですが,この頃大学の教員の方は行政から授業を英語でやれと圧力を受けてるみたいですね.

理由はおそらく留学生を増やすことです.一般的な大学では英語だけで受けられる授業はほとんどなく,留学生向けに開講された英語での授業もありますがまだまだ不十分.日本語ができない留学生が学部を卒業するのはなかなか大変なことです.これは修士課程でも変わりません.

だったら普通の授業を英語でやればいいじゃんという話になったのです.

正しいです.ごもっとも.でも無理です.

海外の大学ではすでに英語化が進んでいるようですね.ヨーロッパの大学でも英語ができれば留学できますし,発展途上国の多くはそもそも母国語で授業を受けられない国が多いようです.インドから来た先輩から聞いた話ですが,インドでは母国語の教科書なんてないので勉強したいなら英語の本を読むしかないとのこと.まぁ,ここはかつてイギリスに支配されていた経緯がありますし英語化されてて当然なのかもしれませんが.

日本はどうかというと植民地になったことはありませんし,昔のえらい先生方せっせと日本語で教科書を書いてくださったので日本語だけで充分勉強できます.以前,古書店で戦前の積分の教科書を見つけたのですが解説は丁寧だし演習問題までついてて感動しました.母国語で勉強することができるということはむしろ幸せなことなことです.

大学のグローバル化の中で東アジアの国々は例外みたいで日本と同じように大学では母国語が使われているようです.韓国が一歩リードしていて英語化に舵を切ったようですがいろいろ困難があるみたいですね.

 

もしも全授業が英語化されたら・・・

 

まず教員の問題ですが,大学で教鞭をとってる人は一応研究者ですから英語でやれといきなり言われてもできなくはないと思います.ただ,用意したメモをただ読み上げるような授業が増えることは必至です.それに学生が理解できる英語で話さなければなりませんから,日本語の時よりもさらに丁寧な授業を心掛ける必要がありますし,情報量が減少するのは仕方がないと思います.

ベテランの先生は今まで作りためてきた授業プリントや板書用のメモ,問題をすべて作り直さなくなりますから負担は相当重いです.忙しい教授の代わりに助教や院生が研究そっちのけで質の悪い講義資料を量産する不毛な未来が目に浮かびます.

学生はどうかというと壊滅的です.小・中学生からもう何年も英語を学んできたわけですが.先ほど出てきたインド人の先輩に僕が使っていた高校の英語の教科書を見せたら笑われました.小学生の教科書みたいに見えるそうです.

理系に限った話ですが,大学の英語教育ほとんど論文のを読むための練習に費やされます.3年間勉強してやっと4年生で論文が読めるようになります(?)授業が英語化したら情報のソースはもちろん英語.いままでの学生が3年かけて何とかやったことをいきなり一年生がやるんです.不可能です.

それでも教科書をただ読むという行為は時間をかければできますが,日本の学生は英語を出力すること,特に話すことが壊滅的にできません.だからただでさえ質問が出ない日本の大学の授業がさらに静かになってしまいます.書くという面でも,理系の最も重要なカリキュラムの中に実験レポートのというものがありますが,日本語でも相当きついのに英語で毎週3,40枚のレポートをかけるわけがありません.必然的にレポートの内容は薄っぺらくなるのでそのあとに書く卒論の質も落ちるのではないでしょうか.

そんな感じで英語化が始まった学年の習熟度が下がることは避けられないと思います.

それなら段階的に変えればいいという話になりますが,大学の科目は緩やかに関連してますから同じ事柄を2つの言語で学ぶというのは非効率だったりします.まぁ,いきなり変えるのは不可能ですけど.

ただ,英語化が不可能というわけではないと思います.留学して感じたのですが慣れというのは恐ろしいものです.大学生はよくも悪くも若いですから,「英語を使うしかない」という状況に追い込めば死にそうになりながら適応していきます.本当に死んでしまう人もいるかもしれませんが、

でもやっぱり学問がおろそかになるのはアレですよね.それにいくら行政がやれやれ言っても多分大学はちゃんとやらないと思います.そこで提案です.

入試問題を英語化しませんか?

いやもう恐怖です.日本中が大混乱です.僕は浪人時代にこれやられたら死にそうになると思います.いや,死にます.

英語の問題だけ英語化されているテスト問題をむしろ国語以外すべて英語化するのです.理科も社会も問答無用で.

大学に受かるためならみんな必死に勉強します.何でもします.僕も受験生時代はちゃんと勉強してました.その時期に英語ができなければ大学いけないとなればみんな必死に英語を勉強します.

一番危機感を覚えるのは高校の先生たちでしょう.否応なしで授業に英語を導入すると思います.まずは,学問用語の単語テストから初めて,高学年になるにつれて英語ソースの教材を増やして,意識の高い学校は高校のうちに英語で授業始め出すのではないでしょうか.

そうなると高校生の学力が下がってしまいますが日本全国どこの学生も同じ境遇に立たされるので平等です(帰国子女はずるい).

それでも日本の高校生はもともと学力は高い方なようなので下がっても大丈夫です.

思うのですが高校生はそんなに高度なことは勉強しなくていいと思います.難しいことは大学になってから必死に勉強すればいいんです.

大学入試が難しいのは点差をつけるため.競争原理の実践ですからしょうがないのかもしれませんがどうせ勉強しなければならないなら大学で役に立つ英語を学びましょう.

 

結局どうしたらいいのか

 

遅かれ早かれ世の中の流れ的に英語化は避けられません.今の現状は鎖国みたいなものでそのうち黒船がやってきて開国を迫られます.不平等条約を突き付けられる前に自分から開国するべきです.

ただ痛みのない改革はあり得ない.誰かが犠牲になることになります.

で,多大な犠牲な払いながらも最もスムーズに英語化を進めるために大学入試から変えてしまいましょう.

まずは統一試験から,そのあとに偏差値が高くて積極的に”優秀な”留学生を誘致したい大学から入試問題を英語化させます.長ったらしい論文を読めと言ってるわけではないので一年間本気でトレーニングすれば入試問題ぐらい読めるようになります.

そうすれば,大学に入学するために必死に英語で学んできた学生たちを前にして先生たちもがぜんやる気になって英語で授業し始めるかもしれません.

 

留学生側から考えると

 

勘違いして日本に来てしまう留学生も多いですが,この国ではほかの先進国とは違い日本語ができないと生きていけません(途上国のほうが英語できる気もしますが).これはアカデミックな場でも同じです.だから,ただ日本で学問だけを学びに来たならともかく,日本で就職したいならむしろ留学生が気合で日本語を覚えるほうが正しいといえます.

まっ,日本人が英語を勉強しないといけないことには変わりませんけどね.

英語化が導入される混沌の世代に生まれたかったかも笑.

それでは.