前々から思っていたけど、ちょっと炎上しちゃいそうだからここに書かなかったことを、このコロナウイルス禍で起きてることの本質に近いなと思ったので書いてみます。

このウイルスが流行りだして、何もかもコロナ一色に染まりました。

特にメディアはすごくて、3月からコロナウイルス関連のニュースしか取り上げなくなりましたね。まぁ他に取り上げることがなくなったからというのもあるんでしょう。

で、きっとそこでみんなが思っていることは何かというと、

政治家も専門家もニュースキャスターも新聞記事もまとめサイトもツイッターも言っていることが全然違う

 

特に面白いなと思うのが、いろんな国のトップの人の対応が全然違うってことですかね・・・。地域によって事情はだいぶ違うようですが、同じウイルスに対処しているのに言ってることもやっていることも全然違うし、それに対する結果もまちまちです(政治的なことを書く気は毛頭ないし、政治はわかりませんが、だれが正しかったかわかるのはこの事態が収束して数年後で、今誰かを批判することは不可能だと思います)。

そこに、医療や大学の偉い人が自分の立場からいろんな主張をしていて、評論家や報道家、さらに経営者や芸能人がそれに参戦して世は混沌としてきたわけです。

じゃぁ、いったい何を信じればいいんだって話ですが、今口を開いている人は自分の観点からこの状況を見ていて、確かにその視点から見てみるとそういう風に見えるのだと思います。

でも、誰のことも信じなくていいわけでもなくて、だったらどおしたらいいかを考えるときに、最近やっと信じる人が減ったけど昔はかなり多くの人が信じていた「血液型診断」について考えるとわかる気がするので、あの時のことに思いを馳せてみます。

 

 

始まりはある親子の論文。それが宗教化して多くの日本人(あと韓国人)に伝染した

 

そもそも血液型診断とは何だったかというと、能見さんという方とそのご子息の方が発表した接液型と性格の相関についての話がメディアによって広められて、日本人だけが熱狂的にそれを信じるようになったようです。

10年くらい前までは、血液型と性格に関する書籍がベストセラーになったり、就職とか昇進とかにも影響を与えていたとかないとかといわれていましたが、あれを普通に日本人のほとんどが信じて、平気で他人を差別するという状況はかなり異常なことでした。

で、どうしてそういうことになってしまったのか調べていたのですが(ネットに転がっていたやつだけですけど)、確かに一部の心理学の実験で血液型と性格に相関があるという結果があったそうです。

どのくらい強い相関があったかは知りませんけど1000人規模に調査でもそういう結果はあったようなので、その1000人が完全にランダムで選ばれていたのなら統計的には十分な数だったと思います(大規模な調査は後になってからで、その時は血液型診断を信じる人がまあまあいたのでそのバイアスがあったといわれています)。

その結果から、血液型と性格には相関があると論文を出す研究者が現れてもおかしくないです。研究者は何でもかんでも論文を出してなんぼの職業ですからね。

ただ、もちろん研究者の中にはそれを検証したり、反論したりする役目の人もいるので、アカデミックの世界ではそれほど影響力を持たなったみたいです。ただ、メディアがそれを面白いと思って取り上げたのであんなに爆発的に人々が信じてしまうことになりました。

実際、この話が取り上げられたのは日本だけで、ほかの国では議論さえされていなかったようです。まぁ文化的な要素を考えられていたのかもしれませんが、そこに遺伝子的な要因があるなら日本人以外の人種でも研究が進められてもおかしくないですよね。メディア経由で韓国にも広まったそうですが・・・。あと、台湾の人もおんなじようなことを言っていたような。

で、メディア側の根拠は「自分たちは難しいことはわからないけど偉い先生がそう言ってるからそうなんです」ってもので、その話を聞いた日本国民はもっとよくわからないので信じるしかなかったわけです。まぁ普通に話題性のあるネタですし。

この構図って今の状況と似てませんか?

血液型診断はただの占い的なもので科学とは関係ないといってしまえばそれまでなんですけど、当時、アレのせいで学校でいじめが横行したり、差別された人がいたわけで、コロナウイルス禍でも同じことが起きていると思いませんか?

 

 

統計的な検証は科学的な検証とは違う

 

ここら辺が僕の話の一番怪しいところで、わかっている人から怒らてしまいそうですが、私たちが思っている学問的な検証ってトップダウン的な方法とボトムアップ的な方法があるんですよね。

まず、ボトムアップ的な方法って何かというと、

すでに証明されているより簡単なことから、より複雑なことを証明することで、なんとなくこっちは理系的なプロセスだと思います。

原理が分かってからそこから導かれる当然の結果を得るわけです。たぶん物理学とかこっちの方法をとることが多いと思います。あたまのいい研究者の頭の中でいろんなピースが組みあがっていくイメージ。だから、相対性理論とかって理論が先行していて、今になって実験で結果が確かめられているわけです。

じゃぁ、ウイルスの研究に置き換えて考えると、ウイルスを構成しているDNAとかRNNとかタンパク質の働きはすでにわかっていて、そこから遺伝子解析とか高分子の反応を解析してコロナウイルスの正体に迫っていくって方法です。

反対にトップダウン的な方法って何かというと、結果から逆算して答えを出す方法で、統計的な検証はこっちになります。

まずは1000個とか、100000個とかデータを取ってそこから現れる相関から物の性質とか関係を調べます。文系的な研究に多いように思ってるんですけど、どうなのでしょうか。

例えば低音でゆっくりとしたリズムの曲を聴いた人がその後とったアンケートで落ち着いた気分になったと答えることが多かったから低温でゆっくりしたリズムはリラックス効果があるってなります。

僕的には前者の方がより科学的な検証プロセスだと思っていますが、両方大事で、上からも下からも正しいと証明されたことだったらある程度信用していいってことになります。

で、さっきボトムアップは理系的でトップダウンは文系的って書きましたが、そんなこともなくて、例えば経済学とか社会学とか哲学では理論が先行することがありますし、理系の中でもより複雑かつ応用的なことはトップダウン的なプロセスで進められることが多いです。

その代表格が医学だと思います。

まぁ、実際の研究は両方のプロセスを混ぜながら同時進行で進められているのが実情だと思います。

例えば、いまいろんな薬がコロナウイルスに効くとか効かないとかって話になってますけど、あれってどうやって検証されているかというと、たぶん、

コロナウイルスの細胞壁の特性から、理論的に効きそうな薬の候補を挙げて<ボトムアップ>

とにかくその候補の薬を患者に投与してその効果と副作用のデータを取る<トップダウン>

ってやり方を取っているのだと思います。

で、結局候補の中の薬でなぜこれが効いてこれが効かないのかはわからないというのが実情だと思うんですよね。だから、ある程度数をこなさないと効果があるとか副作用があるとか誰も断言できないんです。

 

 

科学っぽいことを聞いたらどっちの検証方法なのか、その両方なのか考えて信じすぎないのが大切

 

「血液型診断」の話に戻りましょう。僕はアレは罪はあるけど、悪ではないと思っています。

血液型診断が成立した根拠は完全にトップダウンによるものです。

よくわからないけど、何人かで検証したらそうなった。でも理由は知らんってやつです。

僕も治験者を何度もやりましたが、大学でそういう検証を行うのって身内で集めた数十人でやることが多いので、何らかの要因で、もしくは偶然にそういう結果が出てしまうことがあります。

さらに、統計学的な手法を用いれば多少調べることができますが、因果関係の向きも立証することは難しいですし、どこまで行っても憶測なんですよね。

結局、血液型と性格に直接的な因果関係は見つからなかったわけですが、同時みんなそれを信じました

じゃぁ、今回もあの時のようにならないためにはどういうふうにすればいいかというと、ボトムアップ的な検証でもちゃんと正しいかったのかどうか調べてそれによって信用度を考えるってことです。

逆にボトムアップ的な検証が万能であるってわけではなくて理論には必ずぬけがありますから、特に医療とか確実性が求められる世界では両方の検証が必要なわけです。

でも、今はそんなこと言ってる場合じゃなくなってきてしまっているので、あくまで暫定的にメディアや政治家は不確実な研究結果にすがっているという状況だと思います。

それを受け取る側の人間はそのことを理解することが必要だと思います。それによって自分自身の行動も変わるのではないでしょうか。

 

 

結局どうすればいいのか?

 

今すぐにできることは、新しい情報は必ず信用度と同時にインプットすることだと思います。

確かに、新しい情報を入れておくことは必要だと思いますが、すべての情報は一様に確からしいってわけじゃなくて、それぞれの情報にどれくらい確からしさがあるのかその検証方法や根拠から考える必要があるのではないでしょうか。

あくまで、根拠から考える必要があって、よく何々新聞は正しいとか、評論家のだれだれさんは正しいとか、これだけみんな注目しているから正しいという大人の人がいますが、だれが言ったかとか、どのくらい注目されているかはこの状況下ではあまり参考にならないです(STAP細胞を思い出してください)。

で、これからすべきこと、それぞれ受け取る側、媒介する側が自分で考える能力を高めることかもしれません。詳しくないから、専門ではないからは言い訳になりません。わからないなら今から勉強すればいいし、わかる人を取り入れればいいんです。話がずれますがそういう意味で博士号取得者とかある程度トレーニングされた人が必要になるわけですね。

と言っても大学院で生命科学を勉強して修士号を取った自分は混乱してますが笑。勉強あるのみですね。

 

それでは。