「もし研究室配属をやり直せたらどこに行きたいか?」

修士の2年間も終わりが近づいてくると、そんなことをよく話します。

そもそも、人によってがっつり研究に没頭したい人もいれば、バイトや趣味にウェイトを置きながら片手間で研究を進めたい人もいます。修士号を取るのはあくまでつきたい職業に就くためと割り切っている人もいますし、研究者としてのキャリアを積むために実績を残したい人だっています。

研究室をコミュニティーとしてどうとらえるかも、人によってまちまちです。友達としてプライベートも付き合いのある一種のサークルのようなノリの人もいますし、会社みたいにあくまで公的な距離感に徹するのもありです。なかには本当に衣食住を共して家族の感覚で過ごしている人もいますし、超ドライで余計なことは一切話さず、研究室では研究以外のことは一切しないという人もいます。

ただ、研究分野も含めて、今の研究室との付き合い方が理想的だと思っている人は少ないと思います。

だから、もしやり直せたら・・・と思ってしまうわけです。

かという、自分も研究室選びにはいろいろ苦労してきた一人で、2回研究室選びをしていますが一回大事故を起こしています。

適当に研究室を選ぶ人がいますけど、絶対やめてください。一応3年間過ごす可能性があるところなのでこだわって損することはないです。就職先と同じくらい吟味してください。(就職先すら適当に選ぶ人いますけどね)

ということで、今回は研究室を選ぶにあたって失敗しないためのポイントを考えていきたいと思います。

 

 

研究室選びのポイント

 

研究テーマを調べることのほかに、研究室を選ぶ上で必ず調べておかないとならない事が3つあります。

  1. 学生が研究室にいる時間(コアタイムではない)
  2. 予算
  3. 就職状況

研究室の内容的に行く可能性があるなというところは最低でもこの項目について調べておきましょう.

 

学生が研究室にいる時間を調べる

 

研究室選びで一番重要なことは「どれくらい研究室にいることになるのか」調べることです.研究室にはコアタイムといって「月水金の1時から4時」みたいにいなくてはいけない時間が決められいるのですが,コアタイムは当てになりません.本当に笑.

コアタイム外でも研究室に来なければならないってこともありますし,コアタイムでも理由があればいくらでもさぼれます.

重要なことは今所属して学生たちがどんなスケジュールで生活しているかを調べることです.

例えば,「うちはコアタイムなんてないよ」って研究室でも朝の10時から夜の6時まで常に学生がいる研究室は,事実上一日中コアタイムです.

そういうところは学生に週5日フルタイムで動かないと処理できない課題が与えられていたり,実験する時間が個人個人割り振られていたり,夜まで先輩たちが誰も帰らなかったり.いろんな要因で研究室にいなければならない雰囲気ができています.

先輩方が不在の時は必ず理由を連絡している研究室でも,後から入ってくる後輩は研究室に行かない日にいちいち言い訳を考えなくちゃならなくなりますから,どんどんサボりずらくなります.

というかブラックな研究室では,学問に関係する理由がない場合(時には就活,勉強に関することでもダメなことがある)は研究室にいるのが当たり前なのでコアタイムなんて必要がないんです.

逆に「毎日2時から4時までがコアタイム」というところでも,その時間授業があるなら当然研究室に来る必要はありませんし,むしろほかの時間は研究室に来なくても大丈夫ということになります.

特に4年生で就活したいとか,院試で他大に行きたいという人はあまり忙しくない上半期に研究室に来なくても大丈夫なのか調べておくのは必須事項です.反対に研究室でしっかり研究したいという人は,一人だけではなかなか進められないものなのでしっかり先輩たちが来るところを選びましょう.

1人しかいない部屋で研究を進めるのは結構きついです。切磋琢磨できる仲間がいて損はないと思います。

 

 

学生室に行って確かめる

 

その研究室の学生に何時間研究室にいるのか直接聞いてみても,ブラックなところはブラックであることを隠したかったり,ちゃんと研究していないところは見栄を張ったりしていて本当の時間を教えてくれないことが多々あります.なので自分で学生室に足を運んで確かめましょう.学生室に行くだけならアポなしでもOKです.でも最初はしっかり研究内容を説明したいという方針のところも多いので最初だけはアポをとりましょう.朝と夕方研究室に行って人数を確認してください.いつも半分もいないならそこはホワイト.逆に毎回全員集合ならブラックです.

こうすれば研究室の雰囲気もわかります.ちゃんと集まってはいてもよく見るとみんな遊んでいるところもありますし,息詰まる雰囲気でやってるところもあります.自分があった雰囲気の研究室を探してください.

 

 

予算

 

学部生は気にしないところだと思いますが,実際に配属されてみるとここは研究室によって大きく差があることがわかります.同じ規模の研究室でもお金の持ってる研究室と貧乏研究室では使えるお金が一桁違います.

研究室は大学から抱えてる学生と教員に比例してベーシックなお金をもらっています.でも文房具といった備品や光熱費から,実験に使う消耗品をすべて研究室単位で支払わなければならないので各研究テーマにあてられるお金は限られています.大学からの配当金は行政の大学の運営方針の転換によって年々減らされていて,研究室というものは案外貧乏なものです.

日本の大学も欧米のように企業や公的機関から助成金の形で予算を調達していかなければならないのですが,現実では教員がほかの業務をこなしながらお金も”ぶんどってくる”というのは難しい場合が多いです.

お金がない研究室は企業の下請けのように,研究室のテーマとは全く関係のない実験を企業の代わりに共同研究として行ってお金を稼いでいるところもあります.この場合学生は企業からの依頼をこなすため,労働者としてただ働きさせられます.経験としてはいいかもしれませんが,学生でない人がやればお金をもらえる行為をただ働きでやるというのは考え物ですね.

貧乏研究室では研究で使うものでも個人で使うものは個人でお金を出すという風潮があることが多いです.例えば電気系の研究室では工具や配線類といった消耗品はすべて個人持ちだったり・・・なんだかんだで年間数万円かかることもあります.

PCも一人一台PCを買うお金がなくて個人のものを使うところは多いのですが,シュミレーションソフトや3DCAD,プログラム開発環境を個人のPCで動かさなくてはいけなくなり,今のPCではスペックが足りないから高額なPCを買いなおしたなんてこともよくあります.

そんな貧乏研究室を尻目にブルジョアな研究室はガンガンお金を使っていきます.最新の実験機材をそろえて,消耗品(薬品とか)も惜しげもなく使います.僕はお金持ちの研究室が捨てた材料の中でまだ使えそうなものをこっそりパクってました.

学生実験は道具よりもアイディアだと思いますがお金があるに越したことはありません.入ってから後悔してももう遅いです.

研究室の主な資金源は、助成金と学生数に応じてもらえる大学からのお金ですが、大学からのお金は学部生に対しては2,3万、修士の学生には20万、博士には30から40万円が支給されてると思ってください。それ以外にもいろんな名目でお金はつきますが数十万だと思います。

助成金に関しては、一番大口の助成金である科研費が支給額を公表しているのでそっちを見れば確認できます。

そのサイトで全ての助成金がわかるわけではありませんが、研究内容に関する情報も豊富なので研究室選びには絶対使ってほしいサイトです。

科研費について(以前の科研費に関する紹介記事です。)

自分で助成金に応募してお金をぶんどることも不可能ではありませんが相当険しい道です.覚悟してください.

しっかり研究したいなら、多少予算が多いところに行ったほうがいいです。研究自体にお金がかからなったとしてもいろいろなところでお金は必要になるものです。例えば国際学会学生が行くとなると一回数十万円かかってしまいますが、自分が今所属している研究室では予算的に修士、学部が海外の学会に行くことは予算的不可能だったりします。

まぁ僕はそこまで熱心なわけではないですが、国際学会にバンバン行く人を見るといろんな経験をしていて羨ましいと思っています。(あと、空いた時間に観光できるのも)

がっつり研究したかったり、研究者を目指したい人は予算が多いところを、逆に頑張りたくない人は少ないところの方がいいかもしれません。(予算多い=ブラックとは限らないですけどね)

 

 

就職状況

 

一昔前のように先生や先輩のコネだけで就職できるということはあまり聞きません.それでも就活に強い研究室,弱い研究室というものは存在します.なぜそういう傾向があるかというと,就活に熱心になってくれる教員がいる(逆に学生の就活に先生が興味がないまたは邪魔をしてくる),もともと学生の意識が高い(意識が低くて足を引っ張りあう),研究テーマが企業受けする,ブラック度などいろいろな理由が言われていますが,僕は社会に出たことはないのでなにが正しいかわかりません.

あまりにもブラックすぎて就活する時間(精神力)を削られる研究室があることは確かです.そういう研究室には絶対に入らないようにしましょう.そこまでブラックだと大学院進学を推奨している研究室なのに修士の学生が一人もいないなんてこともあります.博士,修士の数はしっかりチェックしとくべきです.もともと修士に行きたい人が来なから修士がいないい研究室もありますが,修士,博士が多い研究室はそれだけ残りたいと思える研究室つまりいい研究室である可能性が高いです.逆に学部4年生に大学内部の他の研究室に逃げらるような研究室はブラックである可能性があります

ただ少しブラックな研究室に所属していた方が就職で有利なことも否めません.これも僕が断定するのはおかしいですが,意識が低かった学生でもブラックな研究室に所属していれば,当然企業の人たちにしっかり研究(勉強)してきた学生なのだなという印象を与えられます.

ほかの学生の意識というのも重要です.残念ながら他人に流されない大学生はいません.大学生はお互いに影響を与え合って生きています.早い時期から就活に熱心に取り組む同僚がいれば自分も就活しなければという気になりますし,同期の仲間というのは仲間意識も芽生えることが多いので情報を共有することもできます.それに,先輩からのアドバイスも参考にできますよね.

ややブラックな研究室の教授は企業出身であることが多いです.いままで企業でたくさん部下を動かしていて,そのノリで大学の研究室にやってきたのです.だから企業でのルールを学生に当てはめることは当然だと思っています.そうなると週5日フルタイムというのは当たり前になってきます.まぁそういう先生の方が就職の時は頼りになりますが.

大学生が大学に毎日行くべきというのは正しいですし,社会人と同じ環境を経験するのは社会人になった時の練習になるのも確かだと思います.逆に来ても来なくてもいいと学生を野放しにするのは教育義務を怠っているとも捉えられます.

でも生活費を稼がないというけない学生は平日フルタイムで研究室にいたら休日バイトをしなくてはならなくなって休めません.それに,大学生が勉強の他に違うことに打ち込むというのも正しい考え方だと思います.

 

 

研究に専念したければ若い先生のところに行ったほうがいい

 

最後に自分がもしも研究室選びをやり直すなら、絶対若い先生の所に行きます。

ずっと定年に近い先生のもとにいましたが、なんだかんだ一番そこが不満を感じる原因だと思っています。

大学の先生は年をとれば役職が上がって、大学の運営に関わることが多くなります。

研究者というよりは管理職になってくるわけです。

もともと、理系の職業って第一線でバリバリやるには若さが必要なのに、余計な責任や重圧が増えてくるので研究専念することができなくなります。国立先生はある程度年齢が行くと、お役所的な終身雇用になるのでその傾向は一層強まります。

当然、大学の教員の仕事は大学運営や学生の指導も大切な仕事でこれは仕方がないことですけど、研究室の学生的からすると、論文や学会に行く回数は減るし、上の人間が研究をしている姿から盗むのが自分を成長させるための手っ取り早い方法なので