今日、美容室で美容師さんに大学時代の話をして、ふと思い出したことを書いておきます。

大学生だったのは、ちょっと前のことのように思えるのですが、よく考えるとあれから10年が経とうとしています(恐ろしい)。

自分は調布の情報系の単科大学に、大学院を含めて6年間いました(電気通信大学という変な名前の大学です)。

9割以上は男子で、1学年700人の学生が情報工学(IT)を学びに全国から集まってくるので、調布の駅から北に10分歩いたところにある、その空間には恐ろしいカオスが広がるわけです。

簡単に言うとオタクが普通。普通の人は普通じゃないという世界です。大富豪でオタクというカードを4枚集めて革命が起きた世界、それが電通大です。

自分も性根は根暗なオタク(パット見気づかれない自信はある)なので、水を得た魚のように居心地がよかったです。自分はなんか変だなと高校まで思い続けてきたのに、あの6年間だけは「自分めっちゃ普通じゃん」と思えました。そして、今は社会に出て大分自分はヤバいやつだなと毎日痛感しながら生きてます。

 

ある日、エッ○めなライトノベルを布教された

確か、あれは大学2年生の実験の授業の話だったと思います。理系の大学ではあるあるだと思いますが、各学年で実験の授業があって、毎週、一日かけてやって実施した実験結果を小論文(レポート)にまとめて提出するという授業がありました。

これがかなりきつくて、実験自体もハードで予習する必要があるし、実験手順をミスると結果が出ないし、レポートが、1つの実験につきA4用紙20枚とか40枚とかになるので、単位を落として留年する人が続出するんですよね。

そして、これも理系の大学ならどこも同じだと思うんですが、2人とか4人の実験班組まされて、あえて全員で協力しないと実験ができない内容になってるんです。

まぁ、これは学生がコミュニケーション能力や社会性学べるようにわざとそうなってるんだと思います。

ですが、当然ですけど、あの調布のカオスの中でそんなことしたらいろんな事件が起こるわけです。

自分が2人組の実験班を組まされたのは、それまで話したことがなかったN君でした。今思い出せるのはN君は眉毛がすごい太いんですけど、ほっそりしてて、おかっぱみたいな髪型でした。

そして、授業中いつも寝ている。あと全然しゃべらない。

多分、夜に何か活動していたんだと思います。で昼はずっと寝ていました。

もちろん、実験中も寝てて自分は一人で作業することに。

データの読み取りとデータの記入を一人でやるのは結構きついんですよね。ただ、話しかけても普通に無視されるし、怒ってちゃんとやってよって言っても無視される。

最悪だったのがその学年の実験の授業は半年間実験班が変わらなかったんで、毎週N君と(というか一人で)作業することに。

そもそも、自分は眼中にないというか、コミュニケーションの対象になってないと思い。それから実験の授業以外でもあったら必ず声をかけるようにしました。

他の授業のN君を見ていると、数人の人とは話しているようでした。ただ、それ以外の人とはまったく会話せず、コミュニケーションは最小限で済ましているという感じでした。

朝あったら必ず挨拶をし、廊下であっても話かけ、実験の授業でも無視されても話しかけ続けました。

そして、2か月くらいたったら無視されなくなり、不愛想ですが会話してくれるようになったんですよね。

で、ある週の実験の授業で、いつものように寝ているN君は、むくっと起き上がりデータを記録中に僕に、

「この小説すごい面白いから読んでほしいんだよね」

と唐突に500ページくらいありそうなライトノベルを差し出しました。

しかも、表紙が結構エッ○だったんですよね。いや、普通に大学で読んでるときもカバーかけたほうがいいし、電車とかで読んだら普通にマナー違反。

まぁ、そんなことお構いなしという雰囲気があのキャンパスにはありました。

そして、僕は

「ごめん、本とか全然読まないからいい」

と、あっさり断りました。

N君はすごい残念そうな顔をしてまた寝始めました。

ただ、それから、N君は普通にしゃべってくれるようになったし、実験も作業が始まると起きて作業をしてくれるようになりました。多分ですが、あのライトノベルはN君が心を開いたから貸してくれたのかもしません。

それから、専攻が分かれてN君とあることは減りましたが、挨拶くらいはするいわゆるヨッ友としての関係は続きました。

今思うと、N君は自分が推してるコンテンツを布教していたんですよね。あの頃はまだ、推し活とか布教とかいう用語はそんなに一般的じゃなかったので、N君は時代の最先端をいってました。

どうでもいいですが、最近自分がよく使っているサンリオのラインスタンプにペンギンサムが布教しているスタンプがあります。まさに、あの時のN君はこんな感じ、

いま、思うと布教活動を受けた貴重な経験でした。ちなみに、電通大内で本当の布教活動をしている人は6年間いちどもみませんでした。当たり前ですけどね(信仰心とは無縁の人種です)。

ただ、あの大学の普通の学生は仲間で集まったり、布教活動をしたりそういうキラキラしたオタクではなくて、自分の好きなコンテンツは自分だけで見て、特に他人がどう思うが気にならない人が多いと思うので、N君はちょっと変わってたと思います。

ちなみに自分は、高校生時代に工学部に行くならガンダムを見ないと話しについていけなくなると、千葉工業大学の古田貴之先生の講演で聞いて、入学前にガンダムをファースト(初期シリーズ)から見たらドはまりしましたが、大学でガンダムの話をすることはほとんどなかったですね。

そのころは、アイドルをプロデュースする系の話と仮想空間で命がけで戦う系の話が全盛期で、あと、異世界に転生する系を見てる人が出始めたって頃でした。

ということで、ガンダムが好きという人はほとんどいないし、いてもガンダムは系列ごと趣旨が違っていて、ガンダムファンだという人でもシリーズに結構好みが分かれているので、社会人になった今も共感しあいながら話せる人にリアルで会ったことがないですね。

 

懐かしいけど、戻りたいとは思わない愛すべき調布のカオスの話でした。

それでは。