現在絶賛オープンラボ中で高校生の質問を受けるのですが今日を含めてよく、

「この研究を就職後はどんな企業でやるのか?」

みたいな質問を良く受けます。

で、こっちの答えは、

「ふつう大学時代と就職後で同じことはしない(たまたまする人はいるけど)」

です。

大学に来たことない高校生や、研究室に所属したことのない文系の方はよく、理系は大学院で専門性を極めて、そっくり同じことを社会人でするんだ・・・と思ってます。

まぁそういうこともあるし、頑張れば同じことをすることもできますけど、民間に行くと決めた人間がテーマや専門性を引きずって就職するのはむしろ王道ではないです。

理由は簡単で、

 

企業と大学は研究領域を住み分けているから

 

企業と大学は”あえて”同じことをしないようにしてます。(共同研究とするとしても役割を明確に分けている)

なんでかというと、これも簡単な話で、

企業は事業のためにお金になる研究・開発をやっている。逆に大学はお金にならないけど、やんなきゃならない研究をやってる

 

大学側からすると、企業と研究分野が被ると困るんですよね。

研究室単位で研究を進める大学は企業とテーマが被ると勝ち目がありません。

学部時代に所属していた研究室で先生が勝手にやりたいから修士の先輩が半年間やらされていた研究が完全に産総研のテーマと被っていて、断念したということがありました。

産総研は企業じゃないですけど、国の産業のために特許を取るところなのでうちらよりは事業よりです。

何より、学生がメインの研究室に対して、産総研はプロの研究者が十卓な予算を使って研究してます。

だから、大学の弱小研究室と比べると研究の質もスピードも桁違いなんですよね。

CEATECでその研究者の方とたまたま直接話せる機会があったのですが、うちの研究室の5年先を行っているなと感じました。

結局、理系の世界って早いもんがちなんで、現状遅れてて進むスピードも遅れていたら研究する意味がないです。

逆に企業からすると、何でも成果が出れば研究していい大学とは違い、研究・開発を行ったのちにマネタイズできないとやる意味がないです。

マネタイズできる見込みがあるなら、自分たちの予算から多額のお金と人員を出して研究を進めます。

 

 

大学はお金になる成果を出してもお金にできない(ことが多い)

 

ごくまれに、すごいお金になる成果を出す大学の人もいます。

でも、その研究者がその恩恵を受けられることはその人次第というかあまりないと思います。

というのも、大学という組織は未知だったことを既知にすることが目的で、お金儲けするところじゃないです。

私立大学とかだったら、生産ラインも作って何か製品を出すこともあるかもしれませんが(近代マグロとかがいい例かも)、積極的ではないだろうし、したとしてもへたくそです。

しかも、もうけが出てもそれは大学のもので、個人の研究者に報酬が行くことはないと思います。たぶん大学としても利益が出るより、名前が売れる方がうまい。

100人に1人くらい先生で自分の会社を持っている人もいますが、共同研究用の窓口というかじで、おそらく持ってる特許を管理するとかそんなに儲けている感じはないです。

じゃぁ、お金儲けが目的じゃないなら、なんで大学の研究者はブラックに研究しているかというと、なるべく多くの未知を既知にすることモチベーションしているわけです。

で、学会に出て論文を出せば大学に評価される。でも、企業と研究領域が被ると高速で先に企業に論文や特許を出されちゃいます。

そもそも、謎解きが趣味の人たちなので(偏見)、自分の研究成果が社会でどう役に立つのかは興味がないというか考えてないです。

でも、お金につながらないからやる意味がないてことは全然なくて、特許とか取れなくても、人類の知見とか、未来の技術のために今のうちに撒いておいた種っていろいろあって、そういう研究を税金を使ってやらせていただくということになります。

だから、マイペースに進められる企業が興味を示さない、社会的に価値が低いことにのめりこみがちで、その周りの学生も同じフィールドで研究を進めることになるのです

そこで培った専門知識は就職後役立つかといわれるとやっぱり微妙なんですよね。

 

 

大学は研究するためのテーマ(分野)、就職後はお金を稼ぐためのテーマ(分野)と割りきるのも一つの考え方

 

というか、大体の学生が就活時に思うことなんですけど、やっぱり就職後はきっぱり新しいことにチャレンジするのもありだと思うんですよね。

まぁ、みんな大学に残るのもアリかなってちょっと思うこともあるかもしれませんが、結局お金を稼がないで研究するには国からお金をもらうしかなくて、ただ一年に科学研究に使える国家予算ってたかが知れているんで、みんな大学に残れるわけではなく競争率は高いし、頑張って働いたとしてもたくさんお金をもらえる可能性も低い。そうなるとやっぱり企業でお金のために働くって割り切るのは普通な考え方だと思います。

大学ではお金にならないニッチな分野をやっていたけど、就職後は社会的に必要とされるタスクをお金をもらってやるという風に考え方をシフトするわけです。

それじゃあ、いままで勉強した専門知識や研究成果は無駄になっちゃうのかというとそういうわけでは決してありません。

大学で学ぶ、課題を見つけて、必要となる知識を人や文献からかき集めて、推論や実験からデータを集めて、考察し、発表するというプロセスは研究職だとしても研究職でなくても、企業でも大学でも同じだと思います。(大学院生の僕が言うのはおかしいですが)

それに、諸事情があって大学に残っても僕みたいに研究室が変わって分野がガラリと変わることもあるだろうし、いままでやっていたテーマや分野自体が消滅したり、新しいところに行きたくなることだってあります。それに大学もし組織なので、残ったとしてもその時その時、自分に要求されるタスクは変わるはずです。

そうなってくると、自分の財産となる自分の能力は専門知識ではなく、情報収集能力や考察力、問題解決能力のような汎用的な力だと僕は思います(あくまでの僕の意見です)

 

 

大学選びで研究分野を見るのは大切・・・でも、一生それにかかわる確率は少ないの興味のある分野を選ぶ

 

高校生のうちに研究室見学やゼミを見て将来どんなことをするのか考えておくのは、モチベーションの向上になりますし、面接対策にもなるのでありだと思います。どんな人がどんなことをやっているのか知っておけば入ってからのミスマッチも防げる。

でも、さらいにその後のキャリアから逆算する必要はないと思います。

あくまで大学での専門はそのテーマを通して理系力(文系力)というか人間力を身に着ける題材で、身に着けた力をもとに将来はまだ見ぬもっと自分に合った世界に行けばいいんです。

だから、どうせやるんだったら興味を持てる自分が熱中できそうなことを選べばいいと思います。

 

 

それでは。