社会人歴が数年になると”あるある”なのかもしれませんが、自分のキャリアのどこかで独立して働いてみたらどうなのか?ということを考えることがあります。

特に今自分がいるIT業界において、独立することにいろいろ思うわけです。巷ではITエンジニアは独立しやすいといわれているし、自分の周辺でも数人独立した人がいます。ただ、他の独立しやすいといわれている業界と比べるとIT業界はかなり事情が異なっているので、そこについてまとめてこうと思います。

 

本当はITエンジニアは独立しにくい職業

「起業したい」と「独立したい」は使われる意味が異なっていると思います。起業というと、新しいビジネスで会社をはじめ、従業員をふやし、ビジネスを大きくしていくイメージですが、独立は組織から離れ、自分の手で1から10まで仕事を進めていく、そんなイメージではないでしょうか?

「独立=こぢんまりやる」というわけではないですが、普通は個人事業主として一人、多くても3、4人でビジネスをやるイメージです。

私の両親も自分が生まれてから、会社を辞めて独立して働いていました。

ただ、最近まで私は独立して働くことは考えたことがなかったです。自分が生まれてから、両親が苦労しながら働いていたのを見ていたので、あえて考えないようにしていたというのもあります。さらに、親が両方とも会社勤めじゃなかったので、企業で働くことに興味(あこがれ)があったのかもしれません。

今はなんとなく、会社にやとわれて働くってこういうことだな、とわかってきました。

家業のことは、働いてはいないけど、手伝ってはいたのでなんとなく独立するということがどういう感じなのかわかります。いや、むしろ両親が働いている姿をまじかに見てきたので、そこそこわかっているつもりです。

そんななか身近な人たちが独立するという話を聞いて、IT業界で独立して働くことがどういうことなのか考えるようになりました。

 

初期コストの観点では独立しやすい職業と同じ

ネットで「独立しやすい職業」と検索すると一番上に「○○士」という文言が出てきます。ここら辺は納得できます。

建築士や税理士などキャリアのゴールを独り立ちだと考えている人が多いのではないでしょうか?

また、資格を元に働いている人中には、美容師のように自分のお店を出すこと選択肢に入る職業もあります。飲食業などもそうですよね。

これらの職業の特徴としてよく、開業コストの低さが書かれています。医師や歯科医師のように医療系の資格は別として、そのほかの職業は小さな店舗、もしくは自宅で始められるので、独立するのにハードルが低いわけです。

独立するためのコスト低いことは、ITつまり、ソフトウェアのエンジニアにも当てはまります。物理的に必要なものPCだけですし、特殊なプログラムでなければ開発に必要なPCのスペックはあまり高くありません。

無形のコストに関しても、最近はオープンソースとして無料で利用できる技術を使うことが増えてますし、有料のものでも最初から顧客に調達してもらえば、こちらが費用を負担することなしに使用することができます。

知識の面でも、公式のドキュメント類(マニュアルやサンプルコード等)は無料で公開されている、もしくはその技術を使えば無料で提供されることが多いですし、ITの人間は知識をネットに公開するのが大好きなので、重要な情報はネットにあふれています。

その観点ではエンジニアを含むITの技術者が独立するのにかかる初期コストはかなり低いです。

 

仕事の大きさという観点ではITエンジニアは独立しにくい

はい。ここからが本題になります。

独立するにあたって、初期コストよりも大事な概念があります。それは、一つ一つの仕事の大きさです。

この大きさというのは、時間もそうですし、必要とする労働力や対峙する顧客の大きさも含まれます。

ある、プロジェクトにおいて一つの役目を独りで取り組む以上、独立して裁けるプロジェクトの大きさに限界があります。

なので、仕事の規模が小さいほど、単独で動きやすくなります。逆に何人も労働力が必要な場合は、労働者を複数人雇うことになるので、新しい組織を構築していくことになります。これはいわゆる企業になるわけですが、独立って感じとは少し違いますし、かなり難易度が高い(コストが高い)ことだと思います。

ITにかかわる仕事は、初期コストに関しては前述した「○○士」という仕事と同じですが、プロジェクトの大きさに関しては真逆です。

ITのプロジェクトではだいたい、複数の職種のメンバーが必要になります。さらに、一つの職種に対して数人のメンバーは必要になり、全体では数人から数十人の人間が協力して働くことになります。

さらに、チームとしての連携が重要になるのでなかなか個々で動いてプロジェクトを成功させることが難しいのです。

ITの世界でもよく「自分は個人事業主だ!」って叫んでいる人がいますが、いわゆる世間でいう個人事業主と比較したらIT業界の人間は全然仕事が個人で完結しておらず、金銭的には独立しても、働き方はチームで動き続けることになります。

そこで一つ思うのですが、「○○士」とか店舗をやっている個人事業主はよく夫婦や親子で回しているところが多いのに対して、IT業界で家族で回しているところなんは聞いたことがありません。それは、家族レベル(2、3人レベル)でプロジェクトが完結することがほぼないからだと思ってます。

 

なぜ、ITプロジェクトの規模は大きいのか

この理由の一番大きなところから考えていくと、BtoCビジネス成立しにくいというのが規模が大きくなっていく理由に挙げられます。

アプリやwebサービスの運営などは例外としてBtoCビジネスも成立しますが、いわゆる「○○士」のように顧客に依頼される形では、BtoCビジネスじゃ成立しません。

そうなるとBtoBビジネスとして企業相手に仕事をすることになりますが、ITプロジェクトは大きな企業にプロジェクトが偏る傾向があります。

例えば、建築士だったら、一般の顧客に「この土地にこんな間取り家を建ててほしい」と依頼が来ます。契約の額は大きいですが、実際に設計にかかる期間には限度がありますし、設計がおわったら施工会社が建築するので、設計と建築は別のプロジェクトして、自分は設計に集中することができます。

個人でやっている建築家が企業や行政向けに仕事をすることもありますが、例えば、客席10席のカフェや従業員20人の会社のオフィスを設計してほしいとか、公園の休憩所を設計してほしいという依頼だったら、個人でもさばききることができるのではないでしょうか。

しかし、これをITの世界に置き換えてみると、同じようにはいかないことがわかります。

個人の顧客がITエンジニアに家計の管理をしたいからシステムを作ってくれと依頼することはありません。普通に会計アプリを使います。

連絡を取りたいからチャットアプリを作って言われることもないんですよね。普通にLINEを使います。

これは、店舗や中小企業にもいえることで、何店舗もあるとか、複数の業態に分かれているとかない場合は普通に世の中に出回っているサービスやソフトウェアを使うんですよね。となると、比較的大きい企業から大きめの仕事が来ることが多くなるわけです。

それなら、依頼されてシステムを作るのではなく、自分たちでアプリやサービスを開発して運営すればいいじゃないかという話になりますが、シンプルな機能のアプリを開発するのにも、マーケティングや営業、経理、広報など開発以外のメンバーも含めると、一つのサービスを世に出して、継続的に運営するには十数人のメンバーが必要になります。

これがIT業界で個人が目が行き届く範囲でこぢんまりとビジネスができない理由になります。

フリーランスとして、企業に雇われるという選択肢もありますが、結局チームの一員として働くことになるので、独立とは言えないと思います。

またチームに部外者としてひとり入ることには、ここでは説明しきれない問題があったりします。

この話は、IT業界にかかわる人全体に言えることだと思います。プログラマはもちろん、プロジェクトマネージャーやリサーチャーもそうですし、技術側ではないコンサルタントや営業として立ちまわている人も同じことがいえると思います。

例外として、webデザイナーは比較的小規模なプロジェクトが多い印象ですが、今は普通のサイトはプログラミングしなくても作成できてしまうので、複雑で高機能なサイトを作成することが要求されるようになっていきます(フロントエンジニアとwebデザイナー違いは徐々になくなっていくイメージ)。だからwebサイトの案件でも、結局プロジェクトは一人では裁ききれない大きさになってしまいます。

 

IT業界で独立することに対して思うことをまとめてみました。これは、あくまでIT業界以外での独立と比較してIT業界で独立することに対して思うことを書いているので、実際に独立する人が感じていることとは異なっていると思います。

事実、働く人の数、全体が多いのもあるのか、それでもIT業界から独立する人は普通にいます。そもそも、独立する目的によって感じることが違ってくるのかもしれません。そこのところは独立していった人に会いに行って話を聞きたいところですね。

 

それでは。