このブログで何回か話していますが、学部4年の半導体の研究室で先生と喧嘩して研究室を追い出されたあと、脳神経科学の研究室でニューラルネットワークを研究しています。

なんで、脳神経科学でAIに使われているニューラルネットワークを研究しているの?って疑問に思うかもしれませんが、ニューラルネットワークって脳神経の働きをシミュレーションするために開発かされた脳の簡易化モデルで、もともとはニューラルネットワークは脳科学のためのものだったんです。今は完全に人工知能のものですが。

この研究室にいたのは修士の2年間だけなのでそんなに多くのことを勉強することはできませんでしたが、自分でコードを書いて脳のモデルをいくつも作っているうちにこんなことを思うようになりました。

 

 

「AIは人間を超えられないのでは・・・」

 

ちょっとこの言い方には語弊があって、AIに限界があるわけじゃなくてニューラルネットワークに限界があるように思えるのです。逆にもしも、今のDeep Leaningのようなニューロンを使ったモデルではないアルゴリズムが主流になり、ニューラルネットワークよりも優れていればAIは人を超えられます。

で、なんでこういう風に感じるようになったかというと、人の脳に限界を感じるんです。

僕はニューラルネットワークをやっているといても、AIの性能向上のために研究しているわけじゃないんですよね。あくまで脳科学なので実際に脳から得られたデータをもとにシミュレーションを通して脳の構造を解き明かそうとしています。

その中で、研究対象の人の脳に限界を感じるようになった理由は二つあって、

まず、ニューラルネットワークって原理的にはすごく簡単なのに様座な問題を解決することができますが、突き詰めるとそれにも限界があると思います。

実際にモデルを組んでみて思うことは、情報をうまく伝播させるには微妙な調整が必要なんですよね。でも、それにも限度がある。人の脳のシナプスって、たんぱく質や脳内物質による化学的な結合で情報を伝えていて、さらにノイズが載りまくった状態であることを考えると、ものすごくシビアな条件の中でうまくやってると感じます。

それと、これは研究する側の話で、脳科学を勉強している誰でも思うと思うのですが脳科学って全然進歩しないんですよね。戦後すぐに有名な教科書が何冊か出されましたが、そこに謎として書かれていることってだいたい今も謎のままなんです。

確かに、一つ一つの神経細胞のミクロ的な働きは解き明かされましたが、人の意識や汎用性がどのように実現されているかというマクロ的な神経機構は神秘のままです。

脳神経科学が進歩しない理由にデータをとることの難しさがあるといわれています。脳の回路を知るには一つ一つの素子(ニューロン)の働きを知り必要がありますが、神経細胞レベルで脳全体の挙動を実験台を生かしたままで計測することは困難です。技術的にも倫理的にも無理。

でも、最近すべてのデータが手に入り、さらに人間が作ったはずの人工知能もその中で行われているはわからなくなってきました。数十層のCNNなんて完全にブラックボックスです。

なぜ、こんなことが起こるかというと原因は研究者である人間、つまり人の脳にあると思います。

ややこしいですね。ひとの脳を研究の限界が人の脳の性能ってことです。

つまり、脳科学では扱う問題が複雑になりしすぎて人間の脳では解決不可能になったということです。話はそれますが、これっていつかその分野にも起きることだと思います。科学があまりにも進歩しすぎると人の能力が追い付かなくなってそれがブラックバックス化するわけです。

つまり、人の脳の謎を人が解き明かせないことが人の脳に限界があることの証明になるわけです。

 

 

人間の脳がニューラルネットワークの最適解だとすればAIは人間を超えられない

 

自然は自然淘汰(進化的アルゴリズム)によって人間を生み出したわけです。いままで繁栄してきた動物を見ると、体の大きさや移動速度、繁殖力など様々なテーマで進化してきたことがわかりますが、人間は知能がテーマになってます。

で、例えばジュラ紀には体の大きさが進化の目指す方向だったわけですが、際限なく大きくなったわけではなくてピークというか最適な大きさがあったわけです。

それは人間も同じでほかの人類の種の歴史も踏まえて、いまの人間が一つのピークつまり最適解であると考えられます。

で、その理由が、例えば脳細胞を維持するコスト的な話とか、神経細胞の生理学的な特性で決まっていた場合は人工知能とは関係ありませんが、ニューラルネットワークの原理によってこれ以上高性能化することが不可能であったかであると、AIの進化も人間と同じ運命をたどりそうです。

少なくとも、細胞数や計算にかけられるエネルギーに生理学的な制限を持つ人間と比較すれば、扱える情報量や計算スピードを人よりも間然することは可能ですし、現在もそこの部分はあるかにAIの方が優れていますが、人の脳が原理的に解決することができなかった問題はAIも同じ理由で解決できない可能性はあると思うんですよね。

ちなみに僕は、感情や意識も含めて人間のできることすべてAIでも実装可能だと思ってます。多分ニューラルネットワークをやってる人はみんななんとなくこれは思ってるのではないでしょうか。まぁあくまで人間がそこまで人工知能を鍛えることができればの話ですけど。

ちなみに、人間の脳が最適解という話ですが、一部生体的な知見を完全に無視してニューラルネットワークだけやって脳をモデル化する人がいます。その人たち的には人の脳が最適解ならばニューラルネットワークで最適なアルゴリズムも見つければそれが人の脳でも当てはまると考えているのかもしれません。なわけないか笑。

 

 

人工知能=ニューラルネットワークじゃないけど・・・

 

ニューラルネットワークがすべてじゃないけど、やっぱり可能性を感じるのはニューラルネットワークですよね。

それに、とりあえず人間にできないことを人工知能に求めるってことが世間的にはないのでこのままニューロンを意識したモデルが作られていくのだと思います。

ただ、人の脳にこだわると結局人の脳に縛られてしまうような気がするんです。なんとなく

でも、じゃあそこを打開するものを人が作れるかというと、やっぱりそこも人の脳なので難しい。

てな感じで、紆余曲折を経ながら人工知能は進歩すると思うけど、脳科学っぽいことをしているとAIは人知を超える力は習得できないと思うよという話でした。

 

それでは。