最近、就活でめちゃめちゃたくさんの人と話しています。

企業や大学関係者の方と研究とは何か、開発とは何か、生産とは何か、ビジネスとアカデミックの世界の違いは何か、それぞれの方の考え方を聞いていくうちに自分の考えも整理されてきました。

そんななか思い出すのは去年、修士進学時に学部の研究室を辞めたという事実です。

もちろん、面接で研究室を変えた理由を聞かれたら、やりたい研究がほかにあったから今の研究室に移ったといっています。

それは事実だし、今の研究室の研究の方が企業受けがいいので研究室を変えて本当に良かったです。前の研究室でお世話になっていた助教も僕が移る直前に研究室を辞めてて、言い訳もいくらでもできます。

ただ今思うと、あの研究室にいることはどうしてもできませんでした。ほかの人でまだ残っているいる人もいるのでどうして僕は無理だったんだろう・・・。やむを得ず、転職する人もこういう気持ちなのかな。

 

で、あの時に起きたことを整理すると研究室選びに関して一つ思うことがあります。

それは、

学生が研究室で応用研究をやるのはどうなんだろうか

 

ということ。

企業の研究所でもそうですが、大学での研究は、大きく分けると基礎研究と応用研究に分かれています。

分け方はあいまいですが、工学の世界だと製品化につながるような成果物を作っているところが応用研究で、そういうのにはつながらないけど、あるセンサーの原理とかある材料の性質、物理現象の解明とかをやってるのが基礎研究だと思ってください。

で、工学の場合だと3分の1が応用研究で情報工学になると半分以上が応用研究になります。

例を挙げて説明すると、たとえば・・・

義手の開発に関する研究だと、

義手の表面部分に使われる素材の開発を行っているのは基礎研究です。

この場合、学生は化学式とにらめっこしながら、肌触りが良い素材や触れていてアレルギーを起こしにくい素材を考案し生成方法を考えることになります。たぶん笑。

そのほかにも、可動部の動力となるモーターや人工筋肉の開発をする人も基礎研究者に入ります。

じゃあ、義手の開発の応用研究者は何をやっているのかというと、義手を組み立てているんです。

企業や大学が開発した素材やパーツを選定して、組み立てて動かす。聞いているだけでワクワクしませんか?

それに、泥臭い基礎研究の研究室より派手で、実際人気があります。

今はどこの研究室にも3Dプリンターがあるので残りのパーツはCADで設計してあっという間にプロトタイプができます。ちなみに僕が前にいた研究室も応用研究の部類で、3Dプリンターよく使ってました。義手は作ってないけど笑。

それで、5年も大学にいると他学科の研究室で何をやっているかわかってくるのですが、

応用研究の研究室って工作しているだけなのではないか

 

と思うんです。

一生懸命アカデミックの世界で研究している人に申し訳ないですが、企業の研究所にインターンに行ったり、研究者の話を聞くと大学の応用研究に対してそうを思わざるおえません。

批判しているわけじゃないです。ただ、すべての研究室がそうじゃないけどそういう傾向はある。応用研究を大学でしている人の半分は心当たりのある話ではないでしょうか。

義手の話に戻ると、現時点でモーターは存在していて、義手の設計図もある、操作に筋電図(ここは流してください)という技術を使ったとしても、筋電図事態は200年前の技術で、最近企業の方が安く簡単に利用できるようにしたから使っているわけで、新規性はこれらの技術の組み合わせが新しいということだけになってしまいます。

もちろん、開発のためにはそれらの技術を深く知ることが必要です。でも、これも数人の学生が卒業、修論発表や学会発表までの短いスパンで成果を出そうとすると、そこら辺の勉強がおろそかになりがちなんですね。

それでも今流通しているパーツとか技術とかってすごくて、なんとなく組み合わせえるだけで動いてしまうので、それで学会発表や論文投稿ができてしまいます。

イケてる応用研究の研究室はブラックだけど成果の生産性はすごくて国際学会にバンバンいくし、助成金の量もすごくて、正直羨ましいですが、それってブラックボックスとブラックボックスを組み合わせているだけで、テーマを終えた後に残るものは何もないと思うんです。

 

 

問題は研究者がユーザーや社会を意識できるかるかどうか

 

一気に就活ぽい話になりますが、僕は応用研究を否定するつもりはさらさらなくて、むしろ企業で基礎研究と応用研究どっちをやりたいかと聞かれたら応用研究と即答します。

実際企業の研究所にインターンで3か月近く行っていて、応用研究に携わるこれからの目標の一つだと思います。そんな重要な目標ではないですが・・・。

ただ応用研究に関して、大学と企業を比較すると圧倒的に違うものがあります。それは顧客の存在。

大学には「その技術がどうやくに立つのか考えてもしょうがない」という風潮があります。まだ大学にいたことのない人は信じられないかもしれませんが、大学の研究者にあなたの研究はどう役に立つか聞くのはナンセンスと思っている人はいっぱいいます。僕はそうは思いませんが、確かに今やっていることが世に出るのってうまくいっても30年、50年後の話で今それを考えてもしょうがない気もします。

助成金や論文に書いてある、研究の意義はほとんどが後付けで、みんな適当に考えているのは事実で意味を成しません。

みんな、研究のための研究なんです。こういう研究も必要でその中から世の中を変えるような発見が出てくることも否定できないですけどね。

これは応用研究をしている人間も同じで、応用物を作っているのにだれが使うとか、なんのために研究しているとかあまり考えません。というか考えても意味がないし、想像もできない。

ただ、これができないうちに工作をしている意味のない構造物が出来上がります。

一方、基礎研究は頑張っているうちに誰かが自分の成果の意味を見出して使ってくれるかもしれません。

では、企業はどうかというととりあえず、成果は誰かに依頼されてやっていて、社会に出ることが前提になります。で、社会に出てお金という概念で一通り評価を受けるわけです。

収益化できなくても使う人はいるわけで、その人の感想も評価になります。世の中に1人でも喜んでくれる人がいるのならその研究が無意味になることありません。そこで研究の存在意義を担保できるのです。(企業にいる人でも、特許とか論文出せればよくて、ユーザーのこと考えない人はいます)

 

 

依頼されなくても自分の研究ができることをメリットと思う人は大勢います。これをメリットと感じるかデメリットと感じるかが修士を終えた後に大学に残る人間と残らない人間の大きな違いです。

僕は思わない側の人間ですが、研究を進める上では安定して同じことに取り組めるのは絶対メリットです。

ただ、ここで問題になるのがその環境で応用研究を行うと自己満足で終わってしまい、さらに理系人としてのスキルも磨けないという結果に終わってしまう可能性があります。

ここは難しくて、例えば応用研究をしていても、例えば症例の少ない症例に対する治療法やあまりにも公共性が高すぎて企業では手が出せない応用研究を大学ですることには意味があります。

さっきの義手に関しても、企業的にはあまり収益が見込めず活発に研究できない分野だと思うので、そこに一石を投じるのは意味のあることです。

 

 

じゃぁ、どういう学生が応用研究をやっていいのか

 

話がまとまらないないですが、そういう学生が大学で応用研究をすべきで、どういう学生がすべきでないのかというと。

まず、社会がどうとか、意義がどうとか気にしないからやりたい研究をしたいという人は応用研究がしたければしていいです。

この考え方は研究者にとって一番大事な素養だと思います。研究することそのもが目的なら、どんなことでも疑問を感じることなく取り組めるはずです。

でもいまはそう思っていても、研究者としてのキャリアの転機を迎えたときに自分のアイデンティティに疑問を感じるかもしれません。そもそも、大学にいたからといってやりたいことができるわけでもないし、企業に行ったらなおさら無理です。その時のことも考えてみてください。

次に、逆に社会で即戦力として使えるスキルを身に着けたいという人も応用研究は向いていると思います。

気を付けてほしいのは、といっても社会で通用するレベルのスキルが習得できる研究室は限られていて、研究や開発環境は企業の方がはるかに優れているので、最新の技術が身につくようなところは少ないんだと思っていてください。

データサイエンスの分野では、企業と大学の境界がかなりあいまいで人の行き来もあるので、就活時に企業から重宝される可能性は高いですが、この分野は他の分野よりも大学の遅れが激しい分野だと思ってください。(勝手な妄想ですが、情報工学では企業でバリバリやっているがきつくなって一線を引いて大学にいる先生が多いので、技術的な面では先生に頼れません)

研究室の教育でスキルを伸ばすと考えずに、大学では自分で能動的に新しいスキルを身に着ける能力を磨くと考えてほしいです。仕事に直結させることが難しいですが、情報でも本当にスキルを身に着けたいならニッチなところで基礎研究したほうが良いような気がします。

あとは、あんまり研究に没頭したくない人もいいと思います。良くも悪くもうわべだけの研究で何とかなるのが応用研究なので、科学は好きじゃないけど成果を出したい、あとプレゼン力とか文章力とか研究以外の能力を身に着けたい人は応用研究をするのがいいんじゃないでしょうか。

あとの人は、とりあえず基礎研究を考えましょう。最初は基礎研究をしていて、あとから応用研究に手を出すのもありです。応用的なことはいつでもできますが、基礎的なことはなかなかすぐには始められません。

 

 

結局研究室の内情を調べることが大切

 

就活をしていて、企業の内情を知るのは大変ですが、それは研究室を選ぶ時も同じだと思います。

ヤバい研究室ほど都合の悪いことは隠そうとしますし、閉鎖的な環境なのでそもそも、そこにいる学生が自分の研究室が他と比べてどうなのかわかってないことが多いです。

行きたい研究室があったら、外部の人のその研究室のイメージも聞いてみるといいと思います。

まぁ、入ってから変えることもできるので重く考える必要はありませんが、情報収集だけはしっかりやりましょう。

 

 

それでは。