一般IT企業で働いていますが、たまにこんなことを聞きます。

「この人、すごい人ができていると思った人は、だいたい過去に精神的に病んで復活した人」

確かに自分もこの人は心配りできるし、自分よりも他人を優先した行動をとるなと感じる人のなかには、噂によると、昔精神的に病んでしまったことがあって、休職したり、転部したりしたらしいという人がいます。

正直、これは一部の人しか当てはまらない、ちょっと無理やりかなと思ってしまいますが、間違ってもなくて、「IT業界にいる人ができた人=過去に精神的に病んでしまって復活した人」が当てはまる人は存在します。

肉体より精神に不調をきたす人がかなり多い環境

業界特有の状況なのか分かりませんが(自分の周りだけの話ではないとは思っています)、働いていると、身体的に病む人より、精神的に病んで人生が狂う人のほうが圧倒的に多いです。

がんや心臓病みたいな身体的な病にかかると、その後の人生にずっと影響が出ることもありますが、現代医学の力もあり意外と生死に関わる病気にかかった人でも回復後は何事もなく生活している人も多いです。

でも、精神的な病は、医学的な治療も対症療法的な方法しかなく、回復しても以前のようにはいかなくて、病と一生付き合っていく必要がある場合が多いと思います。

あくまで個人的な意見ですが、ITの仕事は身体的な消耗が他業種と比較して極端に少ないのに引き換え、精神的な消耗が激しいです。

働いて稼いだ給料は、おろし金に擦られたように、すり減った心の対価だと思っています。

そんな業界で精神的に病んで回復した人は他人に優しい人だという説を、自然発生的に思いつく人が現れるのだと思います。

ただ、自分はこれは因果関係が逆で、他人に優しい人、窮地に立たされた時真っ先に自分を優先できない人、さらに言うと自分を守る時に他人を切り捨てられない人が、精神を病んでしまっていると思っています。

つまり、「精神が病んで復活した人が、人ができている人」ではなく、「人ができている人が精神を病む」という関係性の中で、なんとか復活を遂げた人があなたが知っている、昔精神を病んでいた人ができた人なんだと思っています。

もちろん、心にビハインドを負った状態で前進できる人は精神力が強かったり、その過程で精神的に成長したということもあると思います。

でも、よく同期と、追い込まれて休職したり退職した人の話をすると決まって「あいつはいいやつだった」と戦場みたいな会話をするんですよね。

何かしらの負荷がかかったときに、自分を犠牲にしてしまった人が心の健康を害してしまったということだと思います。

まともな人間が居られなくなった組織は悪循環に陥る

こういう状態が持続すると他人を傷つけることを厭わないサイコパス的な人しか残らなくなります。

そうなると、新たに人を入れようとしても能力とか人柄関係なしに生き残れるタイプのヤバい人を選ばざるを得ないなってどんどん悪循環に陥ります。

自分は組織を壊す側の人間に近いという自覚はありますが、やはりそういう人間も周りの雰囲気に流されるので、大多数のメンバーがどっちよりかは大事なことだと思います。

これは言い過ぎかもしれませんが、悪循環が起こっていなくなるのは、残っていてほしい人です。なので、いい人が普通に働けない環境は一時的でも避けるべきだと思います。

たしかに、ちょっとくらい気合でなんとかすべきというのはありますが、休職までいかなくても転職を決意させることもない方がいいですよね。

少しずつ人が入れ替わるのはしょうがないですが、人が離れる理由が、精神的なものだと徐々に悪い方向に進んでいくのではないでしょうか?

AI界隈の現状はゴールドラッシュの金鉱のよう

話はズレますが、ITやコンサル業界特にAIやデータサイエンス関係の組織や部署の現状は、より精神衛生的に劣悪な環境と考えています。

これも自分の周りの話や同業の人のうわさ話でそう判断していますが、精神的なリスクを肉体的なリスクに置き換えると今のAI界隈の現状はアメリカのゴールドラッシュの時代の金鉱のようなものだと思っています。

両者とも単純に「お金が稼げる」と噂になり多くの人が集まってきました。私も名刺に「データサイエンティスト」の肩書を書いている一人ですが、実際にAI、データサイエンスの仕事は現在は稼げます。

人手不足なので就職難易度も低いですし、界隈の人の単価や給料を考えるとスキルに見合ってない法外な額になっていることがよくあります(自分もその一人かもしれませんが・・・)。正直、浅めの統計やAIの知識とほとんどないに等しいIT知識だけで、お金を儲けている人が普通にいる業界です。

ゴールドラッシュと書きましたが、いつの時代にもそういう職場はあるのだと思います。で、どうしてその話が精神衛生に関係するかというと、そういうところってやっぱりあんまり精神的に組織にプラスにならない人がそろいもそろって集まってくるんですよね。

ゴールドラッシュの時代、ヨーロッパから一攫千金を目指してたくさんの人がアメリカに集まってきました。偏見なのかもしれませんが、そういう人って地元では事業に失敗したり、家ごと信用されていなかったり、犯罪歴があったり、何かしら問題があった人が命がけで人生逆転のために金鉱を目指したのではないでしょうか?

逆に、地元で慕われてて、職業的にも上手くいっている人は、故郷を捨てて、命がけで渡航してわざわざ労働条件の悪い金鉱なんかで働かないですよね。

おそらく、ゴールドラッシュで金鉱を目指した人は、精神的な豊かさよりも、物質的な価値を優先する人が多かったと思います。

そんな殺伐とした労働者の中で、坑道の崩落や毒ガスの発生、爆発事故などのリスクを抱えて働くのは、肉体的な衛生上かなり劣悪だったと思いますし、精神衛生的にも悪い職場だったのではないでしょうか?

AI界隈もここ10年くらいに急速に発展した市場ですが、集まっている人の話を聞くと、もちろん志や使命感をもって働いているひともいますが、前職で何かしらの問題を起こしたり、技能的に、人間関係的に上手くいかず、逆転先を探してAI界隈を目指した人は多いです。

どのくらい多いかというのは、自分の周辺の話になるので、なかなか言えませんが、この人もそうなのねと思うくらいたくさんいます。

かくいう自分もまさにそうで、学部までは半導体を専攻していましたが、学部4年の卒業間際研究室の先生と揉めてしまい、当時の学科長から内部進学する修士は、研究室だけではなく、大揉めした先生が卒業時の成績会議に関係しない、別専攻に移るしかないと言われました。

修士から専攻を変えることは就活に影響がでると懸念したので、なるべく社会的な需要が多いことを学ぼうとAIを研究に取り入れている研究室に移ったことがAIに関わるきっかけでした。

実際当時(2018年ごろ)はデータサイエンス系の学科等もすくなく、AI関連のテーマを持つ研究室も少なかったので、就活は自分のAI関連の研究内容を軽く説明するだけで、どこでも受かるような状況でした。

となると、私含めて何かしら難ありの傷物の人材がAI界隈には集まってしまうんですよね。しかも、一獲千金を求めているので、傷物なのに懲りずに高飛車というどうしようもない人が多いわけです。

ゴールドラッシュの坑道のなかで、何かしらの異変を感じたら我先にと逃げる必要があります。逆に他の人のことを考えて逃げるのを躊躇した人はその差で命を落とすのです。もちろん程度は全然違いますが、そんな空気感がこの世界にはあります。

もし、AIが安定したビジネスメリット創出するようになって、業界として安定するようになれば状況は徐々に変わってくると思います。一過性のブームで終わればそこで働いていた労働者は私含めて散り散りに消えるでしょう。

それでも、こんな職場環境では出せる結果も出せないと思いますけどね。やっぱり人が変わらないとこの世界はダメなのではないでしょうか?

ここ数年採用にも関係していますが、今この世界に入った人は、大学進学時から志高くAIやデータサイエンスを学んで純粋に社会に役に立ちたいと、やってきた人なので、現状を考えると採用するのに心が痛みます。自分はどうするのかじっくり考えたいと思います。

それでは。