たまたま、いつも通り食堂で一人で昼食をとっていると、やめた研究室のメンバーに会いました。
僕はB4の2月には教授と喧嘩してその研究室に行っていないので、M1のメンバーとは直接にはかかわっていないのですが、ちょいちょい前の研究室の行事には顔を出しているので、普通に就活のこととか気になります。
で、いろいろ話したのですが、ESを書く上で悩んでいることがあるといわれました。
それは、
「専門性を活かせる会社がない」
「そもそも、自分の専門性がわからない」
専門性の高い研究をしている人にとっては理解しがたいことかもしれませんね。文系の人も理系にはみんな専門性があると思っているかも。
でもこの話って、情報、生物、化学、工学といった基礎研究というよりは応用に近い研究をしている人には良くある話なんです。
例えば、情報工学の研究室で、VR端末の映像が人の心情の変化にどのように影響を与えるかの研究をしているとしましょう。
ちなみに、こういう研究は工学の世界では花形中の花形の研究で、学生はいくらでも集まるし、研究資金も一つの研究室で1000万以上集まります。企業からの共同研究の打診も相当来るはずです。
ただ、別にVRの研究をするからといって、デバイス自体を開発するわけじゃないですよね(まぁ開発しているところもあります)。それに、流す画像も専用のソフトウェアかopenGLやUnityのようなライブラリを使うわけです(知らんけど)。治験者の心情は脈や眼球の動きで測定するとしても、測定器を企業から買うわけで自分で作るわけじゃありません。
ただ研究室としてはやることがいっぱいあって、そういうったデバイスや技術を選定して購入し、設定、プログラミングして、実験台を集めて大量のデータをとります。データをとったら今度は定量的に分析し、論文にまとめるわけです。
凄い大変な作業です。でも、科学がない。専門分は何かというとVRのデバイスだったら電気回路とか光学ですけどそういうわけでもないし、脈はとるけど医療的な知識があるわけじゃない。心情に関しても認知心理学的なモデル流用するだけで、専門とはいいがたいですね。
だいたいこういう場合は、統計とかデータ解析ってことになります。今はやりのデータサイエンスですね。でも、特殊な数学とか高度な理論とかを使っているわけじゃないんです。
となると、その人は一生懸命研究をしてきたのに、自分の専門性が何かわからなので就活で何を売り込めばいいのかわからないという事態になります。
これは文系の人も同じなのではないでしょうか。例えば法学部の人は法律のことをめっちゃ勉強して、ゼミにも所属して調査、研究してきたけど、自分の法学に関する知識は汎用的なものだし、そもそも就活生に法学部生はたくさんいるので、専門性でほかの学生差別化できない。とくに、就活を始めたばかりの学部3年生はゼミも所属してないだろうしなおさらですよね。
じゃあ、専門性のない人はどうすればいいのか
そもそも、就活に専門性は必要ない
というよりも、専門性を活かした就活はできなくはないですが、受け皿が小さいので難しいです。
ちょっと、言葉の意味がごっちゃになってるので整理しておくと、ここでいう専門性は研究テーマや専門知識のレベルの話をしています。科学とか工学とか情報とかよりももっと狭義的なやつです。
例えば、「大学で衝撃吸収ゴムの研究をしていて、ゴムメーカに就職して衝撃吸収ゴムを作る」とか、「発光塗料の化学組成を研究していて、企業で発光塗料の生産をする」とか。
法学の話だったら、「交通事故に関する法律と裁判結果について研究していて、保険会社で交通事故に関する案件を担当する」とかですかね・・・、いや文系のことはわからんので的外れな例えかもしれませんね。
ただ現実は、上の例にあげられるような就活をした人はほとんどいないです。それでもいますけどね笑。ただ、自分の専門に絞るとかなり選択肢を狭めることになるので、専門性を売りにできるものの就活そのものの難易度はグッと上がります。
会社取り扱っている分野は専門性が同じならある程度そこは保証されますが、会社選びは職務内容だけじゃなくて、給料、立地、雇用方針、職場の雰囲気、将来性など様々な要因が複雑に絡む中で折り合いをつけていくものなので、分野にこだわるをそもそも、その人が本当にあってる企業に行けない可能性高いわけですね。
さらに、メインの仕事以外にもそこで働く人はいろいろな仕事をしなくちゃいけなくです。
例えば、衝撃吸収ゴムを作る会社でも、ゴム以外の製品も作りますし、ゴムを生産するためのラインの整備もしますし、特許や法律に関する手続きもあります。さらに、取引先へのプレゼンや膨大な事務作業などゴムの会社の社員でもゴムを作っている時間よりもそのほかの時間の方が圧倒的に多いです。
インターンに行って感じたことですが、開発職とか研究職で雇われている人も専門的な仕事だけしてればよいとはならないですね。
だから、専門性があったとしてもそれで圧倒的に有利になるわけじゃないです。確かに、これらの条件がすべてマッチしたうえで、専門分野の仕事を続けられるとしたらそれに越したことないですけどめったにないと思ってください。(そもそも、今やってることを一生続けたいかという問題も)
そもそも、企業と大学じゃ向いてるベクトルが違います。同じ分野だとしても、テーマは大学を企業でしっかりすみ分けているので(だいたい採算の取れないことを大学がやってる笑)そっくりそのまま同じテーマはないと思ってください。
これは、大学に残ったとしても同じ、今やってることをずっと続けて通用することの方が稀です。途中で軌道修正したり、新しい分野に挑戦したりよいうことは必ず必要になると思います。
そのうえで、じゃあ専門性なしでどういうふうに就活していけばいいのか?ということを考えてください。
専門知識や結果を売りにするよりもそれを得るためのプロセスを売り込む
大学、企業含め研究室を渡り歩いて、この世界の闇をいろいろ知ってしまった僕がもし採用面接官になったら、自分の専門知識や専門分野での成果を売り込んでくる学生にはあまり高得点をつけません。むしろ落とすかもしれないです。
それは論文投稿数や知識量は、いろいろな意味で手厚い研究室にいればその学生の実力に関わらず多くなることを知っているからです。
逆に、今日話したM1がいる研究室は真逆の環境で、先生は一切何も教えてくれない(そもそも知らない)し、アドバイスも的外れで結果が出ないとただ怒られるという状態なので、学生はとにかく自分であがいて知識を集め、工夫し研究を形にしなくちゃいけないところでした。
専門知識や専門性は教育制度が整っているところにいたほうが確実に高まります。自分で調べるより、教えてもらった方が吸収が早いからです。しかも、マニアックな専門知識は見つけるのが本当に大変で、論文にも一から十まで書かれてないですし、日本語の教科書にも詳しく書かれてないことが多いです。
そうなるとネットで英語の文献をあさったり、学会で知り合った人に聞いたり、時には自分でデータを出して突き詰めることになります。
僕はあまりにも非効率だと感じたのでドロップアウトしてしまいましたが、その過程で学ぶことは専門性とは呼べませんが、はるかに汎用性があって役に立つ能力だと思うのです。
今所属している研究室は週2回のゼミで先生が手取り足取り教えてくれるので自然と専門性も高まりますし、言われたことだけやってれば成果もでます、でも、0の状態から自分で何かを形作る能力は前の研究室のメンバーの方がはるかに高いと思っています。
専門性や研究成果は運がよくないと得られません。でも、こういう”足掻き”の経験は皆さんあるのではないでしょうか。
それは、研究室やゼミだけじゃなくて、テストやバイト、サークルも含めて考えてください。留学とかインターンでもいいです。新しい方がいいですが、部活や大学受験にさかのぼっていいですよ。困難だったけど自分だったから乗り越えられたという経験です。
どうやって足掻きのプロセスを売り込むのか
フルで就活をして感じたことは、企業は専門性よりもむしろ新しい課題や分野に挑戦してモノにできる汎用的な能力を求めていると感じました。
例えば、先ほどの冒頭にあげたVRの例ですが、VRは開発されて間もない技術で応用例もまだそんなになく、その効果もわかってません。そのVRを世の中に届けるための研究として応用例を考えたり、応用例を実現するためにこれまた未知の技術をかき集めてきて形作る能力はこの先ずっと使えると思います。さらに、その効果を科学的な見地から定量的に分析する能力も大学、企業問わずどの分野でも役立つはずです。
別にVRにこだわらなくても、どんなものを開発してもその姿勢はいかされるし、ほかの業務でも必要な力ではないでしょうか。
さらに、そのままVRの開発を行っている企業に就職したとしても活躍できますし、さらに、VRの次に新しい技術がやってきたとき、いままで培ってきたものでその技術に対応できます。
逆にVRに関する専門知識だけを売りにしてきた人は、新しい技術にその知識が通用しなくなった時に対応できなくなるんですよね。
ちなみにこれは、超よくある話でだれにでも起こりうる現象です。
例えば、ある製品の部品を作る会社がその製品自体の需要がなくなり、部品を作ってもしょうがなくなったので全く違うものを作り出したり、ハードウェアの会社だったのにソフトウェアの商品を主力にするようになったり、あとは、エンジニアが専業だった人が、会社の業務形態が変わって営業的な立ち回りもこなす必要が出たりとか。
メーカに限ったことじゃなくて、例えば商社でも扱う商品がガラッと変わることだってあるだろうし、石油会社が材料をやりだしたり、音楽を制作していた会社が動画を作成しだしたり。
最近は、銀行でもどんどんIT企業化してますよね。広告でもデジタルコンテンツがメインになってくるのではないでしょうか。
そのときに頼れるのは、自分が積み上げてきた知識や成果よりも、プロセスやノウハウです。もしも、環境や目的が変化しても自分は通用するということを証明しましょう。
といっても、働いたことないですし自信なんてないですよね。まぁ、それは面接官の方もわかっているので、自信がなくても考えたを論理的に話しましょう。
自分がどうだったかというと、僕の現在の研究は生物学の研究者の理論をシミュレーションするプログラムの作成です。コードは少しは書けますがテーマは生物学の研究なので、IT系の企業では畑違いになってしまいます。
ただ、生物学者の抽象的な概念を数学を使って具体的なコードに落とし込むということを研究室でしていて、それってSEが社内のアイディアやお客さんの抽象的な要望をモデル図や数式を使って実装していく作業と同じだと説明しました。生物学者の人ってあまり数学的なことに明るい人はいないですし、プログラミングは全く知らない人が多いので、シミュレーションモデルをつくるのには、相手の理論の本質は何かをコミュニケーションのなかで見出して、再解釈する必要があって、それがすごい大変な作業なんですよね。
これだったら、IT業界ならどんな企業でも通用します。
最終的にITに絞ってたのでこういう内容を話しましたが、メーカーや通信、コンサル、広告なんかにも興味がったので、それぞれこういう話を用意してました。
専門性があっても、専門性に頼れば頼るほど、選択範囲が狭まってベストな答えを出すのは難しくなります。
逆に、専門性に頼らない就活すれば自分の可能性を広げることができます。専門性がないと感じるのなら広い視野で企業選びをすれば自分に合った企業を見つけられるはずです。もちろん、専門性があってもあえて専門性に頼らないのもありです。
ただ、全く専門性がないとほかの学生と差別化できないので、プロセスをアピールすることで自分がどうしてその会社に合った人材なのか証明できれば内定がぐっと近づくと思います。
それでは。