ある逆求人型リアルイベントのサイトで、東大大学院生が書いた企業の人事向けの記事の中に「動的安定志向」という言葉を見つけました。

ITエンジニア採用に関連する記事だったので、この記事を書いた大学院生というのは情報系の学生だと思うのですが、「動的」という言葉がいかにも情報系の学生らしいです。英語にしたらdynamic stability orientation 略してDSOですかね笑。

その記事を読んで「動的安定」という言葉が、大企業にはいきたくないけど、ベンチャーにも行きたくなかった自分の心境をうまく一言で表していたのでもっと多くの人に使ってほしいと感じました。

 

 

動的安定志向とは?

 

まず、動的安定志向って普通の安定志向と何が違うんよ?って話なのですが。

一言で言うと、会社に安定を求めるのは無理なので、自分のキャリアが全体を通して安定していればいいよってことです。

特に自分たちの世代は、日本の名だたる大手メーカーが苦戦する様子を間近で見てきました。その結果、「万が一自分の勤めている会社が無くなっても、他で生きていくだけの能力がある」という状態を、新たな「安定」と捉える人が増えてきています。

そうそう。

僕が就活で常に感じていたことです、これ。

もの心ついてからずっと、ニュースで日系の老舗大手企業(特に理系企業)が世界で負け続ける姿をリアルタイムで見続けてきました。

さらに中学、高校に進むと自分でものを買ったり使ったりするようになって、消費者として日本製の製品を避けるように。

特に僕はスマートフォンと一緒に育った世代なのですが、日本製のスマホに全く魅力を感じることがなくいつしか日本製品は情弱な人が買うものだと感じるようになりました。まあ普通に白物家電は今でも日本メーカーの製品を選ぶことがありますけどね。

これはメーカーに限った話じゃなくて、法律や社会情勢の変化、景気、技術革新によってどんな企業もあれよあれよという間に落ちぶれてしまうし、ついでにそれをだれもそれを予測できない。

そんな中逆に、大きな会社だから、古い会社だからダメなのではというイメージを自分たちの世代はなんとなく共有しているんだと思います。

ちなみに、今の自分はこのなんとなく抱いていたイメージをインターンや就職活動を通して確かめたのですが、確かにそうでした。

だから、企業に対して安定を求めるのはもうやめようと感じる人が多くなりました。

別に老舗とか大手が悪いわけじゃないですが、企業にだって成長期と衰退期があって永遠につぶれない会社なんてないんですから、当たり前ですよね。そうやって考えると今の現状って戦前に創業した大手企業が一斉に寿命を迎えているだけのようにも思えます。盛者必衰ということでしょうか。

だったら、自分の価値を高めていつでも転職できるようなキャリアを描ける企業に就職しようってなるのは当然です。

 

 

企業死んでもいいけど、人は生きなきゃいけない

 

努めている会社がダメになっても、自分自身がダメにならなければ会社を変えればいいだけで、働く会社がなかったら最悪自分で企業できるスキルが身についていれば、仕事がなくなることはありません。そんな簡単な話じゃないかもしれませんが、少しでもそこに近づくことがキャリア上の目標になるわけです。

ちなみに、自分の父親がまさにそういうキャリアをたどっていました。僕が生まれたいたときに父が勤めていた会社はバブル崩壊のあおりで倒産するのですが、父はその前に退職して独立しました。

企業というほどの会社ではないですが、起業してまあまあ楽しそうに仕事をしているので、そんな父を見てきた自分は「動的な」キャリアに対して人よりも楽観的に見れるのかもしれません。

企業の寿命は何年とか決まってないです。100年続く企業もあれば10年でつぶれるところもある。まあ、大多数の企業は数年でなくなるのが普通だと思います。

別に企業が倒産することって悪いことじゃないと思います。衰退期に入った組織の悪い部分を刷新するより、しがらみのない新しい組織を作る方が自然ではないでしょうか。父の会社だって父が引退したらたぶん自然消滅すると思います。

でも、人間の寿命は大体決まっていて、生きている間は働かなくちゃいけないし途中で疲れたから終わりにしようというわけにもいかない。だったら安定させるとしたら企業じゃなくて個人のキャリアの方というのは明確な答えですよね。まあ、政治とか知りませんてけど、政策的にもそっちに動いているのかな。

おそらく、動的安定志向という言葉を作った東大の大学院生の方は労働者から見て動的ととらえたのだと思いますが、もっとマクロな政治的な視点から見ても、そういったキャリアを全員が描くようになると、新しい企業がどんどんできて、古い企業はつぶれて、人材はその中をどんどんめぐるわけですからかなり動的ですよね。

で、社会全体はどうかというと新陳代謝がよくなるわけで、古い企業がつぶれても速やかに必要なところに人材が集まるわけですから安定です。現状よりよっぽど健康的ですね。

いや、動的安定志向とはよく言ったものです笑。天才か笑

 

 

動的安定志向の人には転職サイトはあてになると思う

 

じゃあ動的に安定するためのどうすればいいのか。自分が就活しているときは転職サイトはあてになると思っていました。

転職サイトの口コミって社員の人が転職しようと持った思ってサイトに登録したときに、書いた自分の所属企業の評判がのっています。転職しようと思っている人(会社を辞めようと思っている人)が一番評価する部分って転職市場での自分の評価だと思うんですよね。

で、そういう人たちが出ていく会社を評価するということは、転職するという観点から考えてもいい会社だったということではないでしょうか。

たまに、新卒向け就活サイトの就活生の企業人気ランキングで上位になったことを声高に主張する企業がありますが、働いたことない企業の評価はあてになりません。

食べたことのない料理を食べないで食レポするようなものです。

それよりはまだ転職サイトの方がましだと思います。嘘を書いている人もいると思ますが、よほどメジャーなところじゃない限りわざわざ関係ない企業の評判を書く人はいないのでは・・・。

 

 

結局就活は足で稼ぐしかない

 

紹介した東大生の記事では理系大学院生は時間がないので就活時間をかけられないと書いてありますが、就活ちゃっちゃっと終わすのはよくないです。

おそらく逆求人イベントの運営に依頼されて書いているのでそういう書き方になっているのかもしれませんが、辞めるにしてもファーストキャリアである就職する企業は超重要なのでしっかり選んでください。就活は社会を知る勉強の期間でもありますし。

確かに、僕が学部時代に所属していた研究室では教授の圧力がありましたが、そうそう卒業させてもらえないなんてことにはなりませんし、むしろそこで行動しないと先生は学生は就活しないで研究するものだと思い込むので後輩のためにも先生にあらがって就活しましょう。後輩の教育にもよくない。

今の研究室では就活関連のイベントはで最優先事項出すし、普通の研究室はどこもそうです。

で直接働いている人と話してください。それが一番です。率直に聞けばなんでも答えてくれます。

確かに、都合が悪いことは伏せるかもしれませんが、一般社員は企業イメージをコントロールするプロではないので反応で大体察しがつきます。

自分は最王手の日系老舗メーカーに2週間インターンに行きましたが、最終日の懇親会の後に、もっといろんな企業を見る必要があるし、君がやりたいことができる企業はたくさんあって、本当にあっている企業はうちじゃないと思うといってもらえました。

今はいろんな意味でその通りだったなと思っています。

 

 

いろんな価値観で企業を見ることが大切

 

「静的な安定志向」と「動的な安定志向」の2つの考え方を挙げましたが、エンジニア学生が必ずどちらかに分類できるわけではなく、ほとんどはその中間地点にいるように思います。今はまだ価値観の過渡期なのです。

別に大企業に就職することがダメってわけじゃなくて、あくまで大企業に就職できれば「静的安定」が約束されるわけではなくて、「動的安定」も実現できる企業か見極めなければならないということではないでしょうか。むしろ、中小の方が下請け的な働き方になって動的に働けないリスクは高いと思います。

もちろん、安定なんていらないぜ!っていう意見も当然あってしかりだと思います。

それでも、能動的に自分のキャリアを考える動的な価値観がこれから重要になってくるのではないでしょうか。

 

 

それでは。