IT業界の数年働いて最近思うことが多くなってきました
例えば、ITで何をするかはっきりしないのに、DXの文脈でITを活用することだけ決まっていて、プロジェクトの目的がはっきりしないまま進んで行ってしまうことがあるなと思うことがあります。
排除すべきマイナスと、獲得したいプラスが明確ではなく、具体的な目的が見えてこないままプロジェクト実施することが目的にしまいお金と労力が費やされている気持ち悪さはなんとも言えないものがあります。
もちろん、何をすべきか目的を決めるのもITに従事する者の役目なわけですが、自分が新規技術(AI)の分野では、雲のように形のないものをつかみ続ける必要があって、つかめるときもあればつかめないこともありますが、このままではいつか投資が打ち切られるそんな焦りを感じます。
そもそも、前例のないことをしているのでしょうがないこともわかりますが、この状態から抜け出す方法が見つからない理由は「紙からITへの置き換え」という古のパターンを捨てきれず、「この世に存在しなかったものをITで表現する」ということの意味を理解できないからと思っています。
これは、きっとず自分がこの業界に来る前から主張されてきたことですし、同じことを書いているネットの情報があふれていますが、改めて、今自分が感じていることを文章化しておこうと思います。
紙上で実施してきた業務の課題を、ITに置き換えて解決というフレームワークが通用しなくなった
SIer(顧客企業の依頼を受けてITシステムを開発・導入する企業)で働いていると、まず最初に教わる問題解決のフレームワークがあります。これは大学時代の情報系、工学系の授業でも取り扱われる概念だと思いますが、とっくに陳腐化してしまった(一部まだ通用するとことがある)概念かもしれません。
それは、人がIT(デジタルデバイス)を使わずに紙面上で実施していた仕事でおきる課題(不都合)を、IT上で行うことで解決するという考え方です。
ちょっとまえだったらペーパーレス化、最近はDX・デジタルトランスフォーメーションと区別してデジタイゼーションって呼ばれたり、呼ばれなかったりします。
念のために例を挙げて、この「紙からITへ」がどいうことか書いておきます。
例えば、ホテルの予約管理はひと昔(ふた昔?)前はフロントにある予約台帳に、顧客から電話で予約が入ったら顧客の情報を記入して、どの部屋がどの顧客に予約されているか管理していました(今もそういうホテルや旅館はあると思います)。
これだと、フロントにある一つの帳簿を見ないと予約が確認できないです。だから、全国に複数の施設があるホテルの場合予約が入っているか確認するには、予約台帳が存在する拠点に電話して確認してもらわないとわからない状態になります。
ここで生じる課題としては、例えば違う施設や旅行代理店から予約をとること不可能ですし、台帳が何らかの理由で紛失してしまったら終わります。このほかにもいろいろ不都合があるんだと思いますが、それを手っ取り早く解決する方法がIT化で、サーバー上に予約情報を保持して各拠点から照会することですべての課題を丸っと解決できるわけです。
この元からある紙の業務をIT化すれば、課題を解決できるという考え方は、シンプルかつワンパターンで確実にビジネス価値が創出できるので、SIの世界では定番のフレームワークとして定着ていました。
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ただ、自分がこの世界に入ってきた時には、この「紙からITへ」というフレームワークが通用するところはだいたいIT化されてしまっていて、このパターンをそのまま適用してビジネスメリット生み出せる部分はとっくになくなっていたと思います。
残っているとことはIT化できない理由があったり、採算が取れないところではないでしょうか?正直、紙からITへ移行するだけでお金がもらえるプロジェクトがあったら、なにか裏があるのではないかと勘ぐってしまいます。
ただ、それに代わるどこでも適用できるIT化の手法は誰もわからず、しょうがないので今もIT界の古典として、この紙からITへという考え方が大学の授業やSI企業の研修で今まで出てくるわけです。
紙からITへの次のフレームワークにはDXという名前はあるでも、中身は決まってない
置き換えられる業務は紙からITに置き換わっているけど、さらにIT化によって利益を創出しないと生き残れない。その流れの中でDXという言葉が流行したんだと思います。
別に競合はいなくて、人材や材料といったリソースは潤沢にあって、需要も継続して存在するなら、別にDXは必要ないです。今までの業務をこれからも続けていれば企業は存続できます。
ただ、何もしなくても未来永劫ビジネスを続けていけるほど市場は甘くなくて、何らかの変化を起こさないと生き残れないという危機感からITに活路を見出したい、そういう企業がDXに注目しているのが今の現状です。
じゃぁ、紙からITへの時代と何が違うかという話になりますが、大きく違うのは「ITで何をするのかが決まってない」というところにあります。
どういうことかという、紙からITへ移行する際、IT化する既存の業務はすでに存在していて、誰もが明確にそれを定義することができます。そしてIT化して解決したい課題も明確にあり、なので自然とIT化による利益も見積ることができますし、ベストな手法も自然に決まります。
一方、DXではどうかというと、ITによる効率化や収益化によって利益を創出することは決まっていますが、何をするのかは何も決まってないんですよね。
そして、すでに業務はIT化されているので、そこからさらに利益を出すには、これまで存在しなかった何かを生み出さないといけないわけです。
何って何?って感じだと思いますが、誰もわからなくて、新たに考えなきゃいけないから困ってしまうんです。
僕もわかりませんが、さっきのホテルの例で無理やり考えてみます。
例えば、ちょっと前にあったのが、予約が入ってない部屋を日中だけテレワークスペースの予約サイトに掲載して利用料をとるですかね。
あと、最近だと月額のサブスクリプション契約でどこの施設でも泊まりたい放題とかもありますね。
バックオフィス側に目を向けてみると、スタッフ不足や施設間のスタッフにスキルの偏りに対応するために、スタッフのスキルや経験居住地から自動的にどのスタッフがどの施設のシフトに入れるかアルゴリズムで自動決定するとかでしょうか?
3つ目のアイデアは今自分が思いついたアイデアですが、出勤先の施設が変わる弊害や社員のスキルの評価が上手くいかないなど失敗するリスクはいくらでもありそうです。
これらはITがない時代では、業務的に不可能でそういったサービスは成立しないですが、ITを駆使すればアイデアを形にすることができます。
でも、これってこれまでのホテル業界の常識じゃ考えられなかったことで、そもそも存在しないサービス(業務)がないわけです。となると、業務を一から考えなければならないですし、実際にやってみないと採算が取れるかわからないわけです。
紙からITの時代だったらこの業務をIT化すればこれぐらいの利益は出ると確証をもってプロジェクト進めることができます。でもDXとして0から1を生む出した場合、まず技術的にそれが可能かわかりませんし、それをやることで新たな人間がしなくてはいけなくなる業務がどんなものかわからないですし、実現したとして効果があるかもわからないわけです。
そこをなるべく定量的に評価することが大事なのかもしれませんが、どんなにシミュレーションしてもプロジェクトにかかわる誰も自信をもって今自分たちがしてることは正しいと言い切れない現状になります。
DXブームでから動いているプロジェクトはいつか破綻する
最後は信念だ!みたいなことを言う人がいまプロジェクトを動かしているのが現状なのかもしれませんが、根性論で進んでいるプロジェクトはDXのブームというか熱量が落ちてきたら破綻すると思います。
ブームが去ったら、忘れ去られててなかったことにされるのがIT業界の常かもしれません。でも、自分の数年の仕事が無になるのは自分は嫌ですね。
じゃぁ、どうすんの?って話ですが、この記事は問題提起で終わらせようと思います。そうするのかを探すのが今だと思いますし、数年すれば何らかの形で決まった型ができると思います。
それが、どういう型なのかよくわかりません、もしかする今現在世の中で行われている試みを否定するような型かもしれませんね。そしたら、過去を振り返ってあの時代のIT業界は自分も含めて何をやってたんだろうか?と思うのでしょうか?
それはそれでいいんですけど、歴史がなかったことになるのは嫌ですね。今は答えを出すための必要なプロセスであってほしいです。
それでは。