日本の大学には2つの大きな分類があります。それは「理系か文系か」そして、「公立か私立か」。

 

この違いは大きいです。キャンパスライフもカリキュラムも異なります。それぞれメリットもデメリットもありますが、これが正解という選択はなく一人一人が自分の適性を見極めて志望大学を選べばいいと思います。

 

でもひとつだけ、これだけは正しいということがあります。

 

理系に進学するなら国立大学を目指せ

 

理由は主に二つ

 

  1. お金
  2. 教員に対する生徒数

 

まずはお金の話。普通の工学部、理学部の学生が1年間大学で勉強するのにかかる費用は1年間に200万円といわれているらしいです。ということは、4年間で800万円ということになります。

 

ここでまず理解してほしいことが一つ。理系と文系じゃ勉強するのにかかる費用が全然違うということです。入学当初は理系でも文系でもノートと教科書さえあれば勉強できますが、年次が上がってくると理学でも工学でも様々な機材が必要になります。しかも、研究用の器具はどれもこれも本当に高い。実験で何気なく使ってる電流計は20万円以上しますし、僕が学部の時学んでいた半導体分野では、1億円超える機材を1つの実験で何台も使ってました(毎年維持費もめちゃくちゃかかる)。

 

さて、国立大学の学費は1年間にだいたい50万円。残りのお金はどこから出ているかというと、税金ってことになります。もちろん、私立大学にもいろんな名目でお金が行政から支払われているので別に国立大学だけが特別ってわけではないです。でもやっぱり額が違うので受験生の方もご存知の通り国立大学のほうが圧倒的に学費は安くなります。

 

家にお金がある方は少しぐらい学費が高くてもいいかもしれません。それに今の時代はいろんなところから奨学金が下りるので何とかしようと思えば私立に通っていてもなんとかなります。ただそういう問題をクリアしてもお金の問題は終わらないのです。ではその問題とは何か一言で言ってしまうと私立大学と国立大学では、

 

”一人あたりにかけられる費用が違う”

 

これは非常に深刻な問題です。費用が違うと、一人当たりの教員数、機材数、学習スペースに差が出てきます。

 

まずは一人当たりの教員数。理系で独学で卒論が書ける人はいません。もし書けたとしてもそれではわざわざ大学に来ている意味がありませんよね。たしかに独学で学べることもありますが、人に教わることでより多くのことをできるようにするのが正しい大学生だと思います。

特に専門性が上がると、世の中に日本語の教科書が存在しない分野が出てきます。そういったことは英語の論文を読むか、詳しい先生や先輩に聞くことになりますが、人に日本語で教えてもらった方が楽に早く理解できます(英語で情報を集める能力も重要なスキルですが)。

 

理系文系含めた学生数になりますが、各大学の学生数に対する教師数を比較すると、東大が一番多くて4人に対して1人。そのほかの国立大学は5人から15人に一人って感じです。対して私立大学は早稲田大学が30人に一人、明治大学が32人に一人って感じです。GMARCHでくくられる大学はだいたい30から40人くらいでした。

 

まぁ、これを見る限り私立と国立では教員の数に2~10倍の差があるわけです。特に研究室単位では国立大学ではだいたい教員一人に対して3人程度の卒研性がついて卒論を書くのに対して、私立では10人を超えることもあります。

 

生徒をたくさん抱えた先生は大変です。本音は自分の研究を進めたいのに、卒研性のために大量のテーマと実験課題を用意しなくてはなりません。自主的に研究を進められる学生ばかりならそれでうまくいくかもしれませんが、実際は一から十まで指示を出さないと動かない学生もいます。

 

そうなってくると、卒論の内容を薄くしたり、本当は一人で進めるテーマを分割して複数の学生にあたらせたり、はたまた前年度のデータを使いまわしたりしなくてはならなくなるのです。

 

これでは学生一人当たりの経験量、というか学んだ事も減ってしまいます。私立の方が高いお金を払っているのにおかしいと思いませんか?

 

次に機材数の話。理系は道具がないとやっていけません。昔の法則や定理は紙と鉛筆を使って発見されました。でも今は理論系の研究室でも高性能なコンピュータがあって、ノーベル賞はモニターの画面から生み出されます。研究室内にどれだけ高度なシミュレーションが可能なコンピュータがあるかでその研究の進行スピードは決まります。

 

[追記]現在は大学院で人工知能のモデルを動かしてますが、ー度動かすだけで一日以上かかることがあるのでコンピュータの処理能力=研究スピードという感じです。

 




僕が専攻している半導体の分野は特に道具ありきなところがあって、「この設備があればこの実験ができる」、「この機器があればもっと正確な値が出る」実験の内容は道具で決まります。

 

どんないいアイディアがあったとしても、それを実行できる道具がなければ実現できないのです。しかも、半導体の加工機材は一台で一億円を超えるものもあるのでそうそう買えるものではないです。

 

そんな高価な機材を卒論や修論、学会発表のために何台も使うので、一研究室では到底そろえることができません。ですから、どこの大学でも高価な加工機器は共用ということになります(実験はお金を出して企業に委託というパターンもあります)。

 

そこで問題になるのが使いたいときに使えるかということです。輪講発表(研究室や学科単位での進捗状況の発表会)前や卒研を書き始める時期に急きょ実験する必要が出てきたということはよくある話ですが、その時使いたい機材が1週間待ちの状態じゃ実験が進まないです。それに、機材の操作方法も複雑なので学生が多いと教育しきれないという問題も出てきます。

 

最後に学習スペース。確かに私立の方が設備はきれいです。ここ数年都心には立派な私立大学のキャンパスが続々立ちました。確かに立派な校舎へのアプローチを見るとあこがれてしまいますよね。

 

でも、重要なのは門構えがかっこいいとかトイレがきれいとかじゃなくて、テスト前に占領できる机が学校にあるかなんです。

 

忘れちゃいけないのが私立の方が学生数が多いこと。同じ学部数の大学だったら私立の方が3倍から4倍学生を抱えています。でも、授業の合間に作業ができるノマドスペースが3倍4倍あるというわけではないのです。自習スペースがないと空き時間やテスト前に自習室難民になってしまいます。

 

所属していたサークルの関係で都内の大学は10校以上いったことがありますが、 感覚的な話ですがやっぱり私立の方は密度が高いというか、ごちゃごちゃしている印象を受けました。これは人によって好みは分かれると思いますが何年も在籍するのだから落ち着いたキャンパスの方がいやすいのではないでしょうか。

 

 

学生数が多いことはメリットか?

 

よく、私立大学の広告で大勢学生を抱えていることをうたったものがあります。でも学生数が多いことはメリットなのでしょうか。確かに学生が多いとスポーツは必然的に強くなりますし、著名な卒業生も増えます。

 

お正月にやっている駅伝の出場校を見るとどこも私立ですよね(たまに筑波大学が入ってますがあそこは例外です)。

 

母校が出ている人はアレを見ると誇らしい気持ちになるそうですが、一年に一回だけの話で、自分自身に帰ってくるメリットはありません。むしろ選手の強化に使っているお金を一般の学生の学費に当ててほしい。

 

全体的に活躍している学生が多い印象がして魅力的に感じるかもしれません。でもその大学であなたが活躍しなければ意味がないのです。そして、学生数が増えればライバルも増えます。

 

例えば、行政のプロジェクトで海外に生徒を派遣するというものがあるとします。その場合渡航費や現地での滞在費に補助金が出るなど何かとお得なことが多いのですが、各大学にはよく”1大学につき5名学生を派遣してください”というように通知が来るのです。

 

この時、学生数が多いと応募者も増えてその権利を得る可能性は下がりますが、学生数が少ない大学だと選考とかも特になく希望すれば行けるということになります。

 

就職する企業は大きい方がいいかもしれません。でも入学する大学は大きいからいいとは言えません。「鶏口となるも牛後となるなかれ」ということわざがもろに当てはまるのが大学というところです。(ただ同偏差値帯の話ですこれは・・・)
一番いいのは牛口になることですが、難しいです。なかなか笑

[追記]就活でも国立大学は有利だと実感した

 

入学時の偏差値に対して、就活時に企業の方からの評価が高いとかなり感じました。これは入学した時から先輩たちが良く言ってたことですが、自分が就活してみると確かになと実感しましたね。

 

内定者の顔合わせの際に、他の内定者の出身大学がわかりますが、受験生時代に併願して受けていた私立大学の名前はなく、私立大学で名前が上がるのは僕が最初から受かるわけないなと感じて受けもしなかった大学ばかりで驚きました。

 

ただ、他の国立大学生はどうかというと、すごくいいとこから来ている人もいるんですけど、大体は自分が出願するか悩んだ大学だったんですよね。

 

就活中に企業の人から一度だけ聞いた話なんですけど、私立はブランドやネームバリューを重視する人が行って、国立はちゃんと研究したい人が行くイメージだと言っている人がいました。

 

実際はそんなことないのかもしれませんけど、やっぱり上で説明した一人当たりの研究格差的なものを業界の人も感じているのかもしれません。

[追記]コメント欄でそもそも私立の大学院生が少ないという指摘をいただきました。

 

 

僕は私立大学に在籍したことがないので,本当は国立大学にも私立大学にも勤務したことある先生や大学を渡り歩いた博士課程の学生のほうが説得力のある説明ができると思いますが,そんな僕でも確信できるほど理系は国立に行った方がいいです.

 

でも,本当にどの大学が自分に合っているかは行ってみないとわかりませんし,どんな大学でもメリットデメリットがあります.もし,ここだという大学あるならそこがあなたの行くべき大学だと思います.

 

それでは.

(高校生、大学生に向けて記事を書いているのでよかったらTwitterのフォローよろしくお願いします。就職とか研究生活について三日に一回くらいぼそっとつぶやきます。twitter.com/picker_wtb

 

同じ様な感じで、都内の大学に進学したほうがいいという話を書きました。

 

経験がない、理系科目が得意じゃないけど、情報学部・工学部に進みたい人向けの記事です